核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

書籍紹介

筒井康隆「日本以外全部沈没」

小松左京『日本沈没』のパロディ。本は今手元にないのですが。 題名通り日本以外全部沈没しちゃって、世界中の有名人が日本に押し寄せる話。 「ヒューズがとんでる」というので見たら、当時の大富豪ハワード・ヒューズが飛行機でとんできたというギャグは覚…

黒田翔大「電話社会のディストピア : 星新一『声の網』に描かれた未来社会」

日本文学における電話を研究なさっている、黒田翔大氏の最新の論文。 しかも星新一。これは読むしかありません。 明治前期に書かれた遅塚麗水「電話機」と、昭和戦後のSF『声の網』との類似は前から気になっていました。星新一がマネしたということはあり…

シャンタル・ムフ『政治的なものについて 闘技的民主主義と多元主義的グローバル秩序』(購入予定)

副題の「多元主義的グローバル秩序」のあたりに惹かれました。要熟読です。 正直、ラクラウとムフの共著を読んで、少しムフ熱が冷めつつありますが。 夫婦漫才じゃあるまいし、ラクラウ=ムフなんてユニット名自体どうなのかと。 エルネスト・ラクラウについ…

本橋哲也『ポストコロニアリズム』(岩波新書 二〇〇五)

ポストコロニアリズム(字義通りには植民地主義以降)を、「植民地主義による支配の構図を反省し、反転し、反抗する」(序より)思想としてとらえる入門書。 その大義には異論はないのですが、問題は実現手段です。たとえば、フランツ・ファノンの、植民地…

トドロフ読破計画

ウィキペディアによると二〇一七にお亡くなりになったとか。惜しい話です。 そんなトドロフの厖大な著作の中から、これは読みたいと思った本を記しておきます。 ※ 『小説の記号学―文学と意味作用』(1967年) - 邦訳:1974年、大修館書店、菅野昭正・保苅瑞…

ツヴェタン・トドロフ『民主主義の内なる敵』(予告)

構造主義者としてしか知らなかったあのトドロフが、21世紀の民主主義について論じた書物があると知りました。 日本の福島原発災害にも言及しているようです。 『批評の批評』と合わせて、次回はトドロフ祭りになりそうです。ムフに不満なわけではありませ…

真銅正宏『偶然の日本文学』

横光利一の「純粋小説には偶然が必要」という問題提起を受け止め、小説における偶然について論じた一冊。 私にとっても重要な問題です。「おわりに」から引用。 ※ 小説を読む時、読者は、現実世界にはとても起こりえないような事件でも、それを予想すること…

大澤聡『批評メディア論』(岩波書店)

小林秀雄はいかにして「批評の神様」的存在となったのか。そのあたりを知りたくて読んでみたのですが、情報量の多さに圧倒され気味でした。場合によっては買って読む必要がありそうです。 とりあえず、最も示唆に富むと思われる一節をコピーしてきました。 ※…

大澤聡『批評メディア論』(岩波書店) 予定

今回いただいたコメントについて、いろいろ思うところがありまして。 そもそも、批評家が実作者より偉いという風潮とか、一部批評家が神様のようにように崇められる悪習はいかにして生じたのか。そのへんの問題意識に応えてくれそうな本が見つかりました。 …

夏目漱石『三四郎』中の戦争批判

以前、当ブログは漱石の「従軍行」を全文引用し、漱石が平和主義者ではなかったと論じました。 しかし一方、先日の小森先生の最終講義で、『三四郎』中に、同じ日露戦争を批判的に語っている箇所があることを知らされました。公正を期すために引用します。 ※…

ロラン・バルト『明るい部屋』より ストゥディウムとプンクトゥム

バルトの写真をめぐる文章のなかで、唯一使えそうな気がした箇所。 ラテン語で、ストゥディウムとはある写真への平均的な感情に属す一般的関心。 プンクトゥムとは写真の場面から矢のように発し、私(バルト)を刺し貫く傷のようなもの。なんだそうです。 乃…

小森陽一『戦争の時代と夏目漱石―明治維新150年に当たって』かもがわ出版 二〇一八

やっぱり、漱石が平和主義者だったとは思えないなあ。と賛同できない点もありましたが、これはと思った箇所も。 『虞美人草』の、父親の肖像画が上から見下ろしているという箇所で。 ※ 皆さんは、上から見下ろす肖像画を見たという方はあまりいないと思いま…

三浦俊彦「デリダのパラドクス」(『論理サバイバル』二見書房 二〇〇三)より

同書一二七~一二八ページ。「真面目と不真面目の区別などは存在しない、あるのは差異の戯れのみ」と語ってきたデリダが、自分への批判に対してだけは「真面目に」相手の「不誠実」を慨嘆している、というパラドクスを扱ったものです。 三浦氏はそれへの答え…

デリダ『友愛のポリティックスⅠ』『友愛のポリティックスⅡ』(みすず書房 二〇〇三)

「おおわが友よ、一人も友がいない」 ……というアリストテレス(?)の言葉を延々と繰り返すばかりの、何の内容もない本でした。 「それはおまえがバカだからだろ。デリダ様の深遠な思想を理解できないのか」という反論はあるかもしれません。 しかし、私はギ…

『日本文学』二〇一九年一月号 特集 文学における〈公〉と〈私)

特集予告を見た時から期待していたのですが、その期待にたがわぬ内容でした。こういうのを書いてみたかった、と思わせる論文もありました。 それに加えて私を興がらせたのは、特に書名に「公」とか「私」を掲げているわけでもない、ジュディス・バトラーの引…

仲正昌樹『ヘーゲルを越えるヘーゲル』講談社現代新書 二〇一八

越えようがしょせんヘーゲルはヘーゲル。そんな印象しか持てませんでした。 コジェーヴだラカンだハーバーマスだと仰々しく名前を並べても、 ※ 現実の闘争や消耗戦をも肯定し、自らの理論体系に積極的に組み込むところにヘーゲルの歴史哲学の特徴がある。ナ…

坂井孝一『承久の乱 真の「武者の世」を告げる大乱』中公新車 二〇一八

『応仁の乱』がヒットしたおかげか、これまで注目を集めなかった時代に光が当たるのはありがたいものです。 時は鎌倉時代、一二二一年。二年前の源実朝暗殺による朝廷・幕府関係の悪化を受けて、後鳥羽上皇が北条義時打倒(本書によれば、倒幕が目的ではない…

斎藤美奈子『日本の同時代小説』岩波新書 二〇一八

中村光夫の『日本の近代小説』『日本の現代小説』にならって、1960年代~2010年代末までの日本文学作品を紹介する新書。21世紀の現代文学にうとい私のような者にとっては待望の書です。 同書に扱われているなかで私が読んだことのある最新の純文学…

ネグリ&ハート『マルチチュード(上)』『マルチチュード(下)』NHKブックス 二〇〇五 その3

最初に読んだ時は「所詮マルクスではないか」と思ったものですが、再読して印象が変わりました。 「所詮毛沢東ではないか」に。ネグリ&ハートは手を取り合って喜ぶかも知れませんが、ほめてません。 ※ 革命闘争の間、そして大躍進や文化大革命の時期にはさ…

ネグリ&ハート『マルチチュード(上)』『マルチチュード(下)』NHKブックス 二〇〇五 その2

いかにしてマルチチュードは〈帝国〉に抵抗するか。具体例の一つとして、著者たちは「キス・イン」を挙げています。 ※ 今日必要なのは、民主主義のための新しい武器を発明することである。実際、新しい武器を見つけるための創造的な試みは数多くなされている…

ネグリ&ハート『マルチチュード(上)』『マルチチュード(下)』NHKブックス 二〇〇五 その1

幾島幸子訳。水嶋一憲・市田良彦監修。副題「〈帝国〉時代の戦争と民主主義」。 RMA(軍事革命)とか勉強になる箇所もありましたが、結論には同意できませんでした。 ※ 近代を通じて、そして今日もなお抵抗運動は、戦争とそれがもたらす暴力に立ち向かう…

『戦争に対する戦争:アンチ・ミリタリズム小説集』(予定)

次に大きな図書館に行くときに、まとめ読みしようかと思います。あるいは古書で購入するかも知れません。 シュミットの批判をどれだけ超えられているかを見極めるために。 なお、CiNii図書で収録作品一覧が入手できました。 ※ 馬車屋と軍人 / 江口渙著 …

小川未明「野ばら」

『戦争に対する戦争』(一九二八(昭和三)年)に収録された童話。 大きな国の老人兵士と、小さな国の青年兵士が、国境の番をしているうちに、将棋をさすなどしてうちとけていくものの、やがて戦争が始まり、小さな国の青年は北方の戦場に駆り出されていく………

カズオ・イシグロ 土屋政雄訳 『日の名残り』(中公文庫 1994) その2

このたび再読して、やっぱり英国執事スティーブンスは無理してアメリカンなご主人様に合わせるよりも、引退して「真・日の名残り」を楽しんだ方がいいのでは、と思ったのですが。 貯えが予想外に少ないのです。 ※ たとえば、旅の費用です。「ガソリン代はぼ…

綾目広治「〈近代化〉言説の再考」(『日本文学』二〇一八年一一月号)

特集・「近代化」言説の光と影のあわい、巻頭論文。 問題意識は共有していることを確認した上で、感想めいたことを書かせていただきます。 決して、自分の論文がボツになったひがみとか、そういうのではありません。 鷗外の「舞姫」、田山花袋の『田舎教師』…

夏目漱石「従軍行」雑感

国民的作家と呼ばれる夏目漱石が、「僕の従軍行などはうまいものだ」と自賛した、新体詩「従軍行」を岩波版全集より、七回に分けて転載しました。私は今でも漱石がすぐれた小説家であることは否定しませんが、彼が平和主義者であるとか、天皇制への批判者で…

夏目漱石「従軍行」 七/七

※ 七 戦やまん、吾武揚らん、 傲る吾讐、茲に亡びん。 東海日出で、高く昇らん、 天下明か、春風吹かん。 瑞穂の国に、瑞穂の国を、 守る神あり、八百万神。 ※

夏目漱石「従軍行」 六/七

※ 六 見よ兵(つわもの)等、われの心は、 猛き心ぞ、蹄(ひづめ)を薙ぎて。 聞けや殿原、これの命(いのち)は、 棄てぬ命ぞ、弾丸(たま)を潜りて。 天上天下、敵あらばあれ、 敵ある方に、向ふ武士(もののふ)。 ※

夏目漱石「従軍行」 五/七

※ 五 殷たる砲声、神代に響きて、 万古の雪を、今捲き落す。 鬼とも見えて、焔吐くべく、 剣(つるぎ)に倚りて、眥(まなじり)裂けば、 胡山のふゞき、黒き方より、 鉄騎十万、奔として来る。 ※

夏目漱石「従軍行」 四/七

※ 四 空を拍つ浪、浪消す烟、 腥さき世に、あるは幻影(まぼろし)。 さと閃くは、罪の稲妻、 暗く揺くは、呪いの信旗。 深し死の影、我を包みて、 寒し血の雨、我に濺ぐ。 ※