核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

書籍紹介

夏目漱石「従軍行」 三/七

※ 三 天に誓へば、岩をも透す、 聞くや三尺、鞘走る音。 寒光熱して、吹くは碧血、 骨を掠めて、戛として鳴る。 折れぬ此太刀、讐を斬る太刀、 のり飲む太刀か、血に渇く太刀。 ※

夏目漱石「従軍行」 二/七

※ 二 天子の命ぞ、吾讐撃つは、 臣子の分ぞ、遠く赴く。 百里を行けど、敢て帰らず、 千里二千里、勝つことを期す。 粲たる七斗は、御空のあなた、 傲る吾讐、北方にあり。 ※

夏目漱石「従軍行」(一九〇四(明治三七)年) 一/七

※ 従軍行 一 吾に讐あり、艨艟吼ゆる、 讐はゆるすな、男児の意気。 吾に讐あり、貔貅群がる、 讐は逃すな、勇士の胆。 色は濃き血か、扶桑の旗は、 讐を照さず、殺気こめて。 ※ 初出『帝国文学』第十巻第五(明治三十七年五月十日発行) 引用は岩波書店『漱…

デリダ『友愛のポリティックス』1・2(予告)

実のところ、私はデリダを読んで腑に落ちたためしが一度もないのですが。 今の問題意識からすると、避けては通れない本のようです。 果たしてムフの時のように、現代思想開眼の契機となるか、やっぱりデリダは思わせぶりとはぐらかしの天才にすぎなかったと…

小谷野敦『忘れられたベストセラー作家』(イースト・プレス 二〇一八)

軽いつっこみから。木下尚江の「『良人の自白』は明治三十七年から二年、「大毎東日」に断続的に連載され」(七一ページ)とあるのは、『毎日新聞』の誤りと思われます。「大阪」も「東京」もつかない、島田三郎経営の『毎日新聞』。私は同作品の初出を縮刷…

山崎行太郎の「月刊・文芸時評」(第165回)マルクスとエンゲルス(第44回)小林秀雄の「マルクスの悟達」を読む(2)

月刊日本 22(3), 110-113, 2018-03。 CiNiiで検索したら出てきました。「マルクスの悟達」に特化した論は珍しいので読んでみます。 (2018・4・2 追記 山崎氏のブログで、(1)ともども読めました)

『アンソロジー・プロレタリア文学〈3〉戦争―逆らう皇軍兵士』 2015/6 (予定)

気になってはいたのですが未読。いずれ紹介するつもりです。

石原千秋・小森陽一『漱石激読』(河出書房新社 二〇一七)

圧倒的な情報量と熱意で語られる、漱石代表作についての対談。 なのですが、読む私の方に漱石への関心が減退してしまったせいか、著者のお二方ほどには「激読」する気になりませんでした。これはお二方の責任ではまったくなく、私が歳をとったということでし…

カズオ・イシグロ 土屋政雄訳 『日の名残り』(中公文庫 1994)

すでに各方面(作者含む)で論じられた作品でもあり、あらすじを三行でまとめるにとどめます。 私(スティーブンス)は親の代からダーリントン家に仕えた執事。ダーリントン卿が対独協力のかどで第二次大戦後没落した後は、アメリカ人のファラディ様に仕える…

尾崎行雄『尚武論』

題名通り、武を尚(とうと)ぶ、強兵策の提唱でした。 「今日各国交際の状態は恰も春秋戦国之時」の「虎狼世界」で生き残るためには、日本も無防備なひつじであってはいけないといった趣旨(「第七章 外勢」)。 書いた尾崎行雄も褒めた矢野龍渓も若かったの…

尾崎行雄「尚武論」への矢野龍渓の評価

『尾崎行雄全集』第1巻、近代デジタルライブラリー(177/432)より。 「本篇は、明治十二年、新潟新聞記者時代の作。当時、矢野文雄氏は、本篇を読んで大にその思想文華に傾到し、ために、国会開設準備事務官に尾崎氏を推薦したと言はれてをる。―編…

尾崎行雄『新日本』(1887)

「国民皆壮武なるに非ずんば究極今の争奪世界に処して、国家の体面を全ふする能はざる也」。 大体、そのあたりが主題です。個人レベルでの名誉をかけた決闘場面にしても、清国への戦争も視野にいれた強硬策にしても、主人公たち(少女一名含む)の行動原理は…

尾崎行雄の政治小説

今更ながら、尾崎行雄が小説も書いていたことを思い出しました。 英国の政治家ディズレーリの伝記『経世偉勲』と、オリジナルの『新日本』。 どちらも未読。『新日本』の最初のほうを読み始めたところです。 政治小説というのは「小説」として読むと退屈なも…

菊池寛『話の屑籠』

※ 太平洋の和戦の決定は、日本の国力、軍事力の詳細を知悉する政府当局に一任すべきであつて、我々国民としては、いかなる大戦争が起つても、それに伴う艱苦を克服するに足る質実にして耐久力ある覚悟を決めて置くべきだと思ふ。 (以下、「わが海軍の精鋭」…

東亜書房編集局 編『人生百課事典:常識読本』(1936) より 「ロボツト」

1936(昭和11)年当時の、ロボットの定義。 ※ ロ ボ ツ ト 人造人間、精巧な機械組織によつて、生きた人間のやうにある仕事をさせるものです。転じて簡単な、同じ仕事ばかりしてゐる人間は「俺はロボツトだ」などと嘆じます。又黒幕に誰か居て、それに…

川島清治郎『空中国防』 より 「恐るべき無人飛行機」(1928)

1928(昭和3)年に日本のドローン技術を警告した説。 ※ (ドイツの無人戦争飛行機による爆撃を、フランス側が危惧しているという記事の後) また米国の例のミツチエル大佐が(略)排日思想を扇動する中に『次の戦争には某国の無人飛行機が下カリフオル…

上杉慎吉『日米衝突の必至と国民の覚悟』(1924)

タイトルの通り、邪悪な米国の世界支配を日本の手で打倒しよう、物量では劣っても精神的には必ず勝つ、といった内容の本なのですが、その中に、 「永久平和の名の何ぞ偉大なる之を出現するの日本の使命の何ぞ崇高雄偉なる、日米戦争は永久平和の日出である」…

中山孝一『日本憲法改正論』(1930) その2

大日本帝国憲法の改正を訴える中山著から、前回引用し落とした箇所をいくつか。 「(政党政治遂行の障碍は)曰く枢密院、曰く陸海軍、曰く貴族院等である」 「無理は無制限より生る 君主の権力は憲法に依て制限せられ、衆議院議員の権能は解散に依て制限せら…

中山孝一『日本憲法改正論』(1930)

憲法記念日にちなんだ古書紹介を。といっても、新鮮味のある日本国憲法論議はできそうもないので。 「大日本帝国憲法の改正」を提唱した戦前の人はいないものか、と探したら見つかりました。 http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1437002 1930(昭和…

水本正晴「ゾンビの可能性」(『科学哲学』 2006)

心と脳の問題について調べはじめると、チャルマーズのゾンビ論法は避けて通れない話題のようです。 ここでいうゾンビ(水本論のいう機能的ゾンビ)とはモンスターのたぐいではなく、人間とまったく同じ身体・頭脳を持ちながら、クオリア(感覚質。いわゆる「…

『東方見聞録』に描かれた元寇

「さて、クビライ・カーンはこの島の豊かさを聞かされてこれを征服しようと思い」(月村辰雄・久保田勝一訳『マルコ・ポーロ 東方見聞録』(岩波書店 2012 198ページ))で始まる日本遠征記。けっこう長いので箇条書きで。 ・二人の将軍による渡海。…

マルコ・ポーロ『東方見聞録』に描かれた日本

黄金の国呼ばわりされていることは知られていても、そこから先の記述はあまり知られていないのではないでしょうか。今回、図書館で『平家物語』を入手しそびれたこともあり、こちらを紹介します。 ※ サパング(日本国。他のフランス語写本でシパング)は東方…

井原西鶴「筋目をつくり髭の男」(『武家義理物語』巻六 1688)

岐阜中納言秀信公(織田信長の嫡孫、三法師の成人後の名)が出てくるので、1590年代の設定のようです。 ある場で一休の名僧ぶりが話題になり、ついでに蜷川新右衛門は文武の人との評判も出て。ある浪人が自分こそ新右衛門の孫の蜷川新九郎と名乗り出まし…

服部中庸「三大考」(1791(寛政3)年)

本居宣長『古事記伝』の附録で、日本神話の世界像をわかりやすく図にかいて説明した考察です。 画像は国立国会図書館デジタルコレクションより引用。 何もない空間に三神が浮かんでいる第一図に始まり、天・地・泉の三世界がひょうたん状にくびれて分かれて…

群書類従とか

今さらのように気づきましたが、近代デジタルライブラリーには『群書類従』も入ってまして、その中に『承久軍物語』もありました。 「うらうらによする白浪こととはん、おきの事こそきかまほしけれ」の歌もありました。これも今さらですが、隠岐と沖をかけて…

土御門院御集拾遺より

史書によれば、承久の乱に反対していたという土御門院。 その心境を詠んだ和歌がないものかと探していたのですが、やっと一首見つけました。大正4年刊行の『御製集』より。 承久三年阿波国へつかせたまひて 承久記 しらなみ(イ) 浦々によするさなみにこと…

新渡戸稲造『修養』 (1911) その2

ひとつひとつの項目は平凡なんですよ。克己とは己に勝つことだとか、年末には一年を反省しろとか。 ただ、その平凡な教訓はすべて実行できる人は、十分に非凡なんじゃないでしょうか。

新渡戸稲造『修養』(1911) その1

わけあって本文を最後まで読みましたが、特に引用したい文もありませんでした。 代わりに広告ページを。

オルダス・ハックスリイ著 松村達男訳『すばらしい新世界』(原著1932)

『世界SF全集 10』(早川書房 1968)より。オーウェル『1984年』と同時収録。 どうしてそう、極端から極端に走るかなあ、です。すべてが薬品で統制される管理社会と、いっさいの科学を認めない原始社会じゃ、どっちも嫌に決まってるでしょうに。…

ルカーチ著 城塚登・古田光訳『歴史と階級意識』白水社 1975(原著1922)

無価~値の一言。貴重な文化の日をムダにしました。 第一次世界大戦に抵抗する思想を期待したこっちがばかでした。