核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

書籍紹介

梅内幸信「古典落語『死神』に関するモチーフ分析と呪文について : 『死神の名付け親』(KHM44)との比較において」

鹿児島大学(地域政策科学研究 (10), 81-99, 2013-03)掲載。 グリム童話「死神の名付け親」が、日本に伝わって古典落語「死神」となった経緯。 ※ テーゼ3:古典落語『死神』は, 三遊亭圓朝が(仮説:福地桜痴から『グリム童話集(第2版)』における『死神の名…

横手慎二『スターリン 「非道の独裁者」の実像』(中公新書 2014)

スターリンの凄惨な独裁体制は、前任者レーニンの時代にすでに準備されていた、という説は前からありますが、新たな資料が加わりました。1918年5月、レーニン政権下のロシアは食糧難におちいり、食糧を強制徴収された農民の蜂起が起きていました。 ※ こ…

制野秀一「決闘!ウルトラ兄弟」(『小学三年生』1979年1月号・2月号)

懐かしネタをもうひとつ。『ウルトラマンレオ』にも似たような題の話がありましたが、こちらは学習誌のオリジナルストーリーです。 …恐怖のブラックヘル軍団がウルトラの国と地球を同時攻撃してきます。父母ら主力はウルトラの国を守り、ウルトラ兄弟(ゾフ…

文士内閣見立(江見水蔭『自己中心 明治文壇史』(1912)より)

1900(明治33)年、『函館日日新聞』に掲載、週刊『太平洋』第六号(2月5日)に転載、だそうです(いずれも未見)。 内閣総理大臣兼大蔵大臣 紅葉 外務大臣 鷗外 内務大臣 柳浪 宮内大臣 眉山 海軍大臣 水蔭 陸軍大臣 露伴 文部大臣 逍遥 司法大臣 …

隈本有尚「戦争の終期及び第二次戦争と日本の国難を予言す」 その2

第一次世界大戦のさなかに書かれた、「第二次世界戦争」の予言。『実業之日本』1917(大正6)年1月号より。 ※ 極めて大規模で、且つ惨憺たる世界的大戦争だ。而して其時期は千九百三十年、即ち我大正二十年前後であると信ずる。此大戦争が終息して始め…

隈本有尚「戦争の終期及び第二次戦争と日本の国難を予言す」 その1

『実業之日本』1917(大正6)年1月号、特集「戦争は何時止むか」より。 第一次世界大戦すらまだ終わりが見えない時期に、「第二次大戦争の突発期を予言」してしまった、オフサイドな記事です。隈本有尚氏の肩書は「予言者 前長崎高等商業学校長」とあ…

ヤウス『挑発としての文学史』(轡田収訳 岩波書店 1976) その4

深入りしだすと深入りになるので、結論を書き写して終わりにします。 ※ 以上述べて来たところからの結論として、社会生活における文学特有の効用は、まさに文学が”叙述的な”(””内は傍点)芸術の機能に尽きてしまうのではないところに求められる、と言うこと…

『フローベール全集 1 ボヴァリー夫人』(筑摩書房 1965)

実はヤウスの言ってることがどうも腑に落ちなくて読んでみました。 『ボヴァリー夫人』(伊吹武彦訳)も再読しましたが、お目当ては附録の裁判記録のほうです。 ピナール検事の論告(沢田閏(正確には門がまえの中に壬)訳)は以下のごとく結ばれていました…

ヤウス『挑発としての文学史』(轡田収訳 岩波書店 1976) その3 ボヴァリー夫人関連

実は新潮文庫版および筑摩全集版で『ボヴァリー夫人』なんてものを二度読みしてみたのですが、正直、どのへんに革新的な意義があったのか理解不能でした。ヤウスの言う「非人称的(ないしは局外者的)な語り方」というのは、フランス語で読まないとわからな…

ヤウス『挑発としての文学史』(轡田収訳 岩波書店 1976) その2 カール・ポッパー関連

予想外に手間取りました。いつもなら元の文章をそのまま引用してすませるところですけど、どうも訳文が硬くて。 こういうことだろう、と自分なりに見当をつけてまとめてみます。 ポッパー(Popper。「ポパー」と表記されることも)という人は科学哲学では知…

ヤウス『挑発としての文学史』(轡田収訳 岩波書店 1976) その1

かれこれ半年前に読むとかいってそれっきりになってましたが、ようやく入手しました。 ※ 芸術の革命的性格とは、芸術には人間を、歴史的状況に対する固定化した観念や偏見を超えて、世界あるいは先取された現実の新しい知覚へと導く力のあることをいうのであ…

北尾亀男『空翔ける人』―其の六十六―(『都新聞』1922(大正11)年1月6日掲載)

先日のある学会で入手した、配布資料に一回分だけ載っていた小説です。 菅沼と収三の乗った飛行機が墜落し、菅沼は両足挫折、収三は肺臓破裂。節子が駆けつけた時には収三は既に手遅れでした。 この作品の4年前(1918年)に書かれた『三十年後』ではし…

吉田秀樹『川端康成―東京のシルエット』(龍書房 2013 予定)

予告とか予定ばっかですみません。また気になる本が出てきました。 新刊紹介の内容によると、 「大江の川端批判をめぐって」 「浅草と川端『浅草紅団』」 「〈はぐらかし〉と紐帯としての〈おみくじ〉」 「浅草ものとの決別と『出版警察報』」 などと、私の…

藤本勝次編『世界の名著17 コーラン』(中央公論社 1979)

『世界の小国』と一緒に図書館から借りてきた本です。 けちをつけるためではなく、異文化理解の一助になるかと思って読んでみたのですが、残念ながらでした。 全編を通読して一か所、おおいに賛同できる箇所がありました。「36 ヤー・スィーンの章」の69…

ル・サージュ『ジル・ブラース物語』(予告?)

『日の出島』をはじめとする村井弦斎作品に大きな影響を与えたという、知られざる古典。 だいぶ前に私は神田の古本屋街で、岩波文庫の4巻本を見かけたのですが、当時は高くて手を出すのをためらってしまいました。どうせなら『日の出島』を完読してからにし…

山本真鳥編『新版 世界各国史 27 オセアニア史』(山川出版社 2000) その1

ストロマトライトもですけど、この地域については本当に知らないことが多いことに気づかされました。 大まかな地域区分について。「ハワイ諸島、ニュージーランド、イースター島を結ぶ三角形の内側がポリネシア(たくさんの島の連なりの意)、その西の赤道か…

世界情勢を読む会編『改訂新版 面白いほどよくわかる 世界地図の読み方』(日本文芸社 2007)

ナウルやバヌアツに特化した本が見つからなかったので、一般書から読んでみることにしました。 まずバヌアツ。親英派と親仏派の対立の結果、独立(1980年)直前に、「親仏派が分離独立を宣言し、政府はパプアニューギニア軍の支援で鎮圧する一幕があった…

本日の予定

今日は図書館で、「ナウル」「バヌアツ」「百田尚樹」関連の本をありったけ借りてきます。同じことを考えてる人もいるでしょうから、まだ残っていればいいのですが…。

江戸時代に出版されたアメリカ建国の歴史の内容が超展開すぐるwww(仮名垣魯文「童絵解万国噺」)

2chまとめサイトの一つ、哲学ニュース様より。あの『安愚楽鍋』の作者仮名垣魯文が、1861(文久元年)に刊行した、「ファンタジー全開で凄い事になってるんだわ」(同スレ1より)なアメリカ建国物語です。 http://blog.livedoor.jp/nwknews/archives/40…

目野由希「エーテル三様―鴎外美学のオカルティズム」(『国語と国文学』2014年4月号)予告

村井弦斎の『日の出島』には、たびたびエーテル(もしくはイーサー)という物理学用語が出てきます。 当時の物理学で、光の波動を伝えると想定されていた媒質で、現代物理学ではその存在が否定されています。四大元素とかフロギストンみたいなものでしょうか…

長山靖生『日本SF精神史』(河出書房新社  2009) その2 『西征快心編』

このタイミングでというか、だからこそというか。 長山靖生『日本SF精神史』の巻頭に出てくる、日本最初のSF『西征快心編』(巌垣月洲著 1857(安政4年))が気になって仕方がありません。 日本らしき国の徳川斉昭らしき副将軍が、「アジア侵略を進…

長山靖生『日本SF精神史』(河出書房新社  2009)

幕末の儒学者、巌垣月洲が書いた架空戦記『西征快心編』(1857)に始まり、小松左京『日本沈没』(1973)に至る、空想科学小説の系譜を追った労作です。 村井弦斎についても一節を割かれています(94~100ページ)。『食道楽』の内容紹介にあ…

シモン・ニューコム著 黒岩涙香訳 『暗黒星』

日露戦争下に新聞連載された翻訳小説なので(『萬朝報』1904年5月6日~25日)、私は以前読んだことがあるはずなのですが、うかつにも忘れていました。長山靖生『日本SF精神史』を読んでいて思い出し、青空文庫で読み返して衝撃を受けたわけです。…

夏目漱石「思い出す事など」より オリヴァー・ロッジの「死後の生」への言及

「思い出す事など」が収録された、新潮文庫の『文鳥・夢十夜』は私の人生をふみはずさせた一冊でして、ぼろぼろになるまで読んだはずなのですが、コヒラーの発明者ロッジの名前が出てきていたとは気づきませんでした。 初出は1910(明治43)年10月~…

W・ウィルソン著 矢島祐利・大森実訳『近代物理学史』(講談社 1973)

村井弦斎の『日の出島 曙の巻』に出てきた、「コヒヤラ」「イーサーの波動」という科学用語が気になりまして、調べてきました。 「第9章 マックスウェルの電磁理論」「第10章 エーテル」の記述を要約しますと、「真空ガラス管中の銀の電極の間にニッケル…

エミール・ゾラ『制作』(予告)

昨日、友人と西洋絵画の話で盛り上がっている時に、ふと話題に出ました。 セザンヌらしき画家が主人公で、激怒したセザンヌがゾラと絶交した、と予備知識はその程度ですが、尾崎紅葉が影響を受けているという論文もありまして。いろいろと興味をひかれます。…

ラヴクラフト著・大久保ゆう訳「ニャルラトホテプ」(『青空文庫』)

やっぱりアニメの影響でしょうか。青空文庫にまでかの名状しがたき混沌が這いよってました。 http://www.aozora.gr.jp/cards/001699/files/56839_53228.html 私はラヴクラフト読んで怖いと思ったことはあまりないのですが(他に怖いものはいくらでもあるので…

一記者「弦斎夫人の家庭叢談」(『婦人世界』1914年10月号)

下田歌子の「戦時における日本婦人の覚悟」と同じ号に掲載された、村井多嘉子夫人の連載記事です。 いつも通り平常運転といいますか、「昔より里芋はお腹の薬だといつたさうです」等と食べ物の話に終始しています。最後に半搗(つき)米の話題で、インタビュ…

下田歌子「戦時における日本婦人の覚悟」(『婦人世界』1914年10月号)

今から百年前の、婦人雑誌の巻頭論文です。これだけが特に扇動的というわけではなく、サンプルとしての引用であることをお断りしておきます。 ※ 空中には、飛行機といひ、飛行船といひ、最新文明の利器を以て縦横に威力を逞しうしてゐると承はります。海には…

アクロイド天和(クリスティ『アクロイド殺人事件』中村能三訳 新潮文庫 1988)

小学生のころ読んだ推理クイズ本のせいで、私はすでにこの推理小説の犯人を知っています。 にもかかわらずこんな古典中の古典を読み始めたのは、別にテクスト論や語り論のネタにしたいわけではなく、おそらく英文学史上最古という麻雀シーンがめあてです。 …