核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

W・ウィルソン著 矢島祐利・大森実訳『近代物理学史』(講談社 1973)

 村井弦斎の『日の出島 曙の巻』に出てきた、「コヒヤラ」「イーサーの波動」という科学用語が気になりまして、調べてきました。
 「第9章 マックスウェルの電磁理論」「第10章 エーテル」の記述を要約しますと、「真空ガラス管中の銀の電極の間にニッケルの微細粉末とわずかな量の銀の粉末をまぜた」、電磁波を感知するコヒラーという装置を開発・命名したのは、オリヴァー・ロッジという科学者だそうです。ブランリーやマルコーニがそれを改良し、無線電信の発明に至ったわけです。
 その原理ですが、『日の出島』には電気のスパークがイーサーの波動を起こすとありました。これはエーテル(ether,aeteherとも綴る)のことで、光の波動を伝えるとされていた仮想上の媒質です。1881年のマイケルソンとモーレイの実験、それに続くオリヴァー・ロッジの実験でエーテル説にほころびが生じ、アインシュタイン特殊相対性理論によってエーテルの存在は完全に否定されます。
 両方に名前が出てきたロッジ。この本には人物伝までは載ってなかったので、ウィキペディアより。なかなかにユニークな人物です。
 
 
  「ロッジは目に見えない世界こそ実在で、それはこの地球をはじめとする全大宇宙の内奥に存在し、物質というのはその生命が意識ある個体としての存在を表現するためにエーテルが凝結したものに過ぎないと主張した」。電磁波という見えない世界の研究は、神秘主義紙一重なのでしょう。なんか弦斎と気が合いそうです。