核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

#歴史

小林秀雄語録―なぜ戦争は起きたのか

終戦記念日からは一日ずれてしまいましたが。 戦争の被害を語り継ぐだけでは、戦争を止めることはできない、というのが私の信念です。戦争の加害者、戦争で得をした人を徹底的に調べ上げなければ。 その一端として、小林秀雄という批評家の戦前・戦中語録を…

適菜収『小林秀雄の警告 近代はなぜ暴走したのか?』講談社+α新書 2018

小林秀雄全集を引いて、「小林秀雄はヒットラアの邪悪さを見抜いていた」(一四二ページ前後。コピーはとらなかったので大意)と論じる、無価値な本です。 当ブログが何度も述べて来たように、小林の一九四〇年の『我が闘争』書評では、ヒットラーを無条件に…

戦中に「女は自由を束縛する方がいい」と放言した柳田国男(座談会「民間伝承について」より)

「柳田 女がじっとしているところは変わらない。男は動いていても、もどってもくるし、全体の組織を変えないんです。ですから可哀想だけれども、女をなるたけ出さないような方法を考えて見なければいかんですね。女は自由を束縛する方がいいと思うんです」(…

ハイネを騙る柳田国男

林正子「柳田國男のハイネ受容による<民族>の発見 : <民族精神>の 高揚と<民俗学>隆盛の連環を考究するために」 [岐阜大学国語国文学] no.[36] p.[19]-[35] Issue Date 2010-02。 ハイネの『流刑の神々』を柳田が紹介した「幽冥談」についての論文。 ※ ただ…

柳田国男の戦争責任のがれ

桑原武夫との対談「日本人の道徳意識」。『現代倫理』一九五八(昭和三三)年六月とのこと(初出未見)。 日本人の戦争責任についての、桑原の質問に対して。 ※ 柳田 われわれなんかどちらかというといつでもひねくれる方の側だから都合が好かったんだけども…

戦時下こそ最高の時代と言う柳田国男

『文藝春秋』一九四三年(昭和一八)年九月、座談会「民間伝承について」。もはや敗色濃いこの時代を「こんな立派な世の中はない」という柳田の発言。 今回の引用は『柳田国男対談集』(筑摩書房 一九六四)によりますが、以前に閲覧したことのある初出との…

柳田国男「特攻精神をはぐくむ者」

今回は『定本柳田国男全集 第31巻』より。初出である『新女苑』1945年3月号との照合はまたの機会に。 ※ 勇士烈士は日本には連続して現はれて居る。特に多数の中から選び出されるのでは無く、誰でも機に臨めば皆欣然として、身を投げ義に殉ずるだけの…

その人生は嘘だらけ

最寄りの図書館で新潮社の第五次小林秀雄全集の「杭州」「杭州より南京」「蘇州」および別巻2、補巻1を参照しましたが、捕虜殺害の話や従軍慰安婦を買った話は跡形もありませんでした。予期していたことではありますが。

小林秀雄が見た南京の死体

日本軍の南京占領が一九三七(昭和一二)年一二月。その翌春の出来事です。 ※ 塚は三間置きくらゐに掘られ、そこらには、帽子や皮帯や、鳥籠の焼け残りなぞが散らばつてゐる。埋め残した支那兵の骨が、棒切れがさゝつた様に立つてゐる。すべ〱した茶色で、美…

小林秀雄「杭州」の捕虜殺害場面

毎度のことながら、戦後版では削除された箇所です。 火野葦平のトーチカを「四日間で強引に突破した」という談話と、「舟は三潭印月に向ふ」という記述の間。 「×××」等の伏字は、初出誌にあるとおりです。 ※ その時の事だが、火野君は七人の兵を連れ、一番…

買春夫。

「買春夫」という語を検索してみたのですが、少なくともネット上には存在しないようです。1938年には確実に一人、そう呼ばれるにふさわしい男が存在したのですが。

従軍慰安婦を買う小林秀雄

『出版警察報』 号七八ページより。小林秀雄「蘇州」(『文藝春秋』一九三八年六月)の削除箇所についての言及。従って、今回も小林秀雄全集や単行本には載っていない箇所です。旧字体は新字体に改めました。 ※ 文藝春秋 第十六巻第九号 東京市同社発行 六月…

柳田国男『先祖の話』より「七生報国」

『底本 柳田国男全集 第十巻』(筑摩書房 一九六二)より、『先祖の話』(一九四六)。 ※ それは是から更に確かめて見なければ、さうとも否とも言へないことであらうが、少なくとも人があの世をさう遥かなる国とも考へず、一念の力によつてあまたゝび、此世…

小林秀雄「歴史と文学」(『改造』一九四一(昭和一六)年三月)中の「将軍」評

全集版との間に細かい異同はありますが、内容は大差ありません。「文学青年で登場しまして」は初出原文のままです。 ※ 芥川龍之介にも、乃木将軍を描いた「将軍」といふ作がある。これも、やはり大正十年頃発表され、当時なかなか評判を呼んだ作で、僕は、学…

『文豪ストレイドッグス』15巻(予告)

『文豪ストレイドッグス』という漫画の15巻に、「福地桜痴」が出て来るそうです。 今度は「福地桜智」ではなく。 ※ 福地桜痴. 「猟犬」隊長。神刀・『雨御前』を与えられた生ける伝説。異能力は『鏡獅子』。 ※ 今度上京したら探してみます。

夏目漱石「従軍行」雑感

国民的作家と呼ばれる夏目漱石が、「僕の従軍行などはうまいものだ」と自賛した、新体詩「従軍行」を岩波版全集より、七回に分けて転載しました。私は今でも漱石がすぐれた小説家であることは否定しませんが、彼が平和主義者であるとか、天皇制への批判者で…

夏目漱石「従軍行」 七/七

※ 七 戦やまん、吾武揚らん、 傲る吾讐、茲に亡びん。 東海日出で、高く昇らん、 天下明か、春風吹かん。 瑞穂の国に、瑞穂の国を、 守る神あり、八百万神。 ※

夏目漱石「従軍行」 六/七

※ 六 見よ兵(つわもの)等、われの心は、 猛き心ぞ、蹄(ひづめ)を薙ぎて。 聞けや殿原、これの命(いのち)は、 棄てぬ命ぞ、弾丸(たま)を潜りて。 天上天下、敵あらばあれ、 敵ある方に、向ふ武士(もののふ)。 ※

夏目漱石「従軍行」 五/七

※ 五 殷たる砲声、神代に響きて、 万古の雪を、今捲き落す。 鬼とも見えて、焔吐くべく、 剣(つるぎ)に倚りて、眥(まなじり)裂けば、 胡山のふゞき、黒き方より、 鉄騎十万、奔として来る。 ※

夏目漱石「従軍行」 四/七

※ 四 空を拍つ浪、浪消す烟、 腥さき世に、あるは幻影(まぼろし)。 さと閃くは、罪の稲妻、 暗く揺くは、呪いの信旗。 深し死の影、我を包みて、 寒し血の雨、我に濺ぐ。 ※

夏目漱石「従軍行」 三/七

※ 三 天に誓へば、岩をも透す、 聞くや三尺、鞘走る音。 寒光熱して、吹くは碧血、 骨を掠めて、戛として鳴る。 折れぬ此太刀、讐を斬る太刀、 のり飲む太刀か、血に渇く太刀。 ※

夏目漱石「従軍行」 二/七

※ 二 天子の命ぞ、吾讐撃つは、 臣子の分ぞ、遠く赴く。 百里を行けど、敢て帰らず、 千里二千里、勝つことを期す。 粲たる七斗は、御空のあなた、 傲る吾讐、北方にあり。 ※

夏目漱石「従軍行」(一九〇四(明治三七)年) 一/七

※ 従軍行 一 吾に讐あり、艨艟吼ゆる、 讐はゆるすな、男児の意気。 吾に讐あり、貔貅群がる、 讐は逃すな、勇士の胆。 色は濃き血か、扶桑の旗は、 讐を照さず、殺気こめて。 ※ 初出『帝国文学』第十巻第五(明治三十七年五月十日発行) 引用は岩波書店『漱…

福地桜痴論、残念ながら不採用でした。

書庫「近代化言説」は、「福地桜痴」と改名して残しておくことにします。 『空中征服』論の時のように、再起の機会があることを信じて。

アルキビアデースとペリクレースの対話―多数者の専制をめぐって

クセノフォーン『ソークラテースの思い出』(岩波文庫 一九五三 原著は紀元前三八五年頃)より。 今回は長音あり表記で。『経国美談』よりも古い時代ですが、ヘージアスのモデルはアルキビアデースだという説もあり、まんざら無関係な話ではありません。 で…

大澤信亮「小林秀雄」(『新潮』)

第一部完。第二部は二〇一九年以降になるそうです。

福地桜痴『同行二人 外国巡礼』(『東京日日新聞』1889(明治22)・1・3~3・15(中絶))

全集・単行本類未収録の、読めるのは東京日日新聞だけな小説。 読む前は期待しました。あの岩倉使節団も含めて四度の洋行を体験した福地の『外国巡礼』。 さぞかし西洋と日本のカルチャーギャップや、さらには西洋文明批判にあふれたものと想像していたので…

「文明社会の快楽」(『東京日日新聞』一八八三年一二月六日)

題名にひかれて複写したものの、「吾曹」名義でなかったために使えなかった社説。 未開人の性質は情欲が主であり、その快楽は情欲を満足させることにある。一方、文明人にとっての快楽はそうではなく、数千百年の後を遠望するものである…… といったことを、…

吾曹を探せ

『近代文学研究叢書8』の書誌情報には、一人称が「吾曹」じゃない(≒福地じゃない?)社説がけっこう紛れていまして。 最初はマイクロリールの映像で判断しようとしたのですが、なにぶん眼が疲れて。とりあえずリストにあるやつを全部コピーしてもらって、…

32枚だか33枚だか

2枚ほど足りない気もしますが、これでよしとしましょう。当初の問題点はだいぶ改善されたようです。