核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

戦時下こそ最高の時代と言う柳田国男

 『文藝春秋』一九四三年(昭和一八)年九月、座談会「民間伝承について」。もはや敗色濃いこの時代を「こんな立派な世の中はない」という柳田の発言。
 今回の引用は『柳田国男対談集』(筑摩書房 一九六四)によりますが、以前に閲覧したことのある初出との異同はない、はずです。

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 栁田 今が昔でないということをこのくらい大きな声を出して言える時代は今までの歴史にない。こんな立派な世の中はない。この時代にまだ昔の方がいいといって過去の黄金時代を夢見るなんてことは間違ったことだと思う。今ならば確かにより上り坂なんだから、将来は今よりもっとよくなると言ってちっとも差支えない時代だと思うんです。
 (一二五ページ)
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 まあ、『炭焼日記』なんかを読むと、柳田個人はけっこうリッチな食生活を満喫してたようですが。
 時局に乗った学界ボスにしてみれば、確かに「こんな立派な世の中はない」ところでしょう。
 さらに根拠らしきものとして、「教育を受けない無学の者」の「正直な」調査結果を出してきます。

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 この前、われわれの会で手分けをして同じ質問を持って歩いたことがあるが、その中の一項目として、いつがあなたの一番いい時と思いますか、明治初年ですか、あるいは末年ですか、と水を向けたことがあったんですが、一人もそれに同意しない。正直なのは、大正八、九年の景気のいい時がいいと言ったのがありましたが、大体において農村では現在を非常に謳歌しているんです。日本は幸いに今後も非常に偉大な希望に登って行く国であるから、常に国家としても時代というものは変わり変わりしてよくなって行くのだということを、歴史教育の第一義として青年に教えなきゃならんと思うんです。
 (一二五ページ)
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 ……その調査結果から明らかなのは、「民衆は柳田民俗学を権力の手先とみなしていた」ことでしょう。そして、それは正解です。大正と正直に答えた方の安否が気遣われます。
 繰り返しますが、私は柳田民俗学を学問とは認めません。