核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

2011-08-01から1ヶ月間の記事一覧

フクヤマ『歴史の終わり』上・下 渡部昇一訳 三笠書房 1992

となり町の図書館から借りてきました。 コジェーブの読解を経由したヘーゲル主義者の著作。しかも渡部昇一訳。 ついに右翼に転向したかアンタルキダス。違います。前にも書いたとおり、私は「誰が言ったか」ではなく、その言葉そのものによってよしあしを判…

克己願望―気概のもう一つの形態

気概ある絶対平和主義者でありたい。そう思い、誰も読んでないかもな考察を続けるアンタルです。 F・フクヤマは気概を優越願望(人より上でありたい)と対等願望(人なみでありたい)に分類しましたが、私はさらに第3の要素、克己願望(かつみがんぼうでは…

F・フクヤマ『歴史の終わり』における「気概」

はじめにお詫びしておきます。私はフランシス・フクヤマの『歴史の終わり』上下(渡部昇一訳 三笠書房 1992)を読んだことがありません(話題になった当時はお金も時間もなく、余裕ができた頃には「いまさらな~」だったのです)。以下の要約は、柴田純…

プラトン『国家』における「気概」について

おかたい題ですが、古代ギリシアについての専門知識も語学力もない私には、こんな大それたテーマで学術論文を書く力はないのです。で、今回は軽くさわりだけ、岩波文庫の『国家(上)』(藤沢令夫訳)の第4巻319ページあたりから出てくる、「気概」につ…

『日本文学』 1月号特集 文学にとって虚構とはなにか

日本文学協会会員限定ですけど、われと思わん方はどうぞ。 もちろん、私も投稿するつもりです。学部時代からやろうと思って果たせずにいたテーマですし。 そのためにも、八月中になつやすみの宿題を終わらせておきたいものです。 以下は『日本文学』公式サイ…

『5人ライダー対キングダーク』見ちゃいました。

シャープ博士が平和理論を進めている間も、懐かしの特撮にひたるアンタルでした。 ひまなやつだなと思われるかも知れませんが、今日は休日なのです。夏休みの宿題(?)も今日中にカタをつけておきたいし。 5人目(1号、2号、V3、ライダーマンの次)の…

ジーン・シャープの戦略的非暴力理論

私が懐かしのまんがを見てる間にも、平和主義理論は着実に進んでいました。 ダイヤモンド社のビジネス情報サイト、2011年5月4日より。 http://diamond.jp/articles/-/12149 ジーン・シャープ博士 特別インタビュー 「戦略的非暴力で独裁政権は打倒でき…

『秘密戦隊ゴレンジャー』最終回の再放送見ました

思えば三十数年ぶりに見るこの番組の最終回。 ついに最終決戦を迎えた、黒十字軍とイーグル。黒十字総統自らナンバー2のゴールデン仮面大将軍を率いて、ゴレンジャーと対峙します。 (今回は全編ネタバレなので、ここから文字色を反転させておきます) 必殺…

「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」

前から気になってたアニメですが、このたびテレビで見ることができました。 あちこちで論じつくされた作品なので、ここでは一絶対平和主義者の個人的感想を手短に述べます。 そもそも、「新世紀エヴァンゲリオン」とは1995年に社会現象にまでなったTV…

小林秀雄 「無常といふ事」 初出と全集版の異同について

初出(『文学界』昭和17年6月) 全集(第五次) これは、一言芳談抄のなか これは、「一言芳談抄」のなか この文を徒然草のうちに この文を「徒然草」のうちに 彼も屹度覚えてゐてくれてゐるだらう。 彼笑つて答へなかつたが。 聞いて、彼はそんな風に笑…

報知四天王なのに8人いるよ・・・宮武外骨 『明治奇聞』より

回線不調により、あやうく連日更新記録をストップしかけたアンタルです。 さて、1890(明治23)年時点での、報知(郵便報知新聞)四天王といえば、 村上浪六(むらかみなみろく。代表作「三日月」)、 村井弦斎(むらいげんさい。代表作「小説家」)、…

「なぜ殺したいのか?」―クリティアスの最期

時は紀元前403年。アテナイの悪名高きクリティアスの三十人政権と、民主制回復をかかげるトラシュブウロス(「トラシュブロス」表記のほうが一般的なようです)の軍勢は、いよいよ激突の時をむかえるのでありました。 クリティアス軍は騎兵と重装歩兵を中…

「われわれのためというよりは、むしろ諸君のため」

高貴にして冷酷、無神論的ソフィスト(知者)にして独裁者、そして節制を説くブタ。 紀元前403年アテナイ、民意を無視した革命を続ける最晩年のクリティアスの発言を紹介します。 クセノフォンの『ヘレニカ』(ギリシア史)第二巻第四章。バルバロイ様の…

ドーキンス 『神は妄想である 宗教との決別』 原題THE GOD DELUSION

リチャード・ドーキンス 『神は妄想である 宗教との決別』 垂水雄二訳 早川書房 2007(原著2006)。 何はともあれ、こんな本を英国で出した著者の勇気に拍手。 「利己的な遺伝子」説で知られる、オックスフォード大学教授のドーキンス。その彼が一生…

「コクリコ坂から」、観てきました。

栄えある活動写真レビューの第一弾。♪ゆ~る~い調子でいってみます。 なお、一切の予備知識を持たずに観たため(テレビCMだけはたっぷり見せられましたが)、ファンの方には常識と思われるような情報が欠落している恐れがあります(注)。ご了承ください…

小林秀雄にはこりごりでござる、の巻

私の本来の研究対象の一つである『郵便報知新聞』の創始者であり、明治の郵便制度の創設者の前島密(まえじまひそか)は、国語改良運動の一環として「ござる体」を提案していたそうです。通ってたら忍者ハットリくん口調が公式の文体になってたわけで、ニン…

そもそも、なんで小林秀雄を研究しようと思ったのか。

結局、論文は昨日中には完成しませんでした。今夜はひさしぶりに徹夜しそうです。 表題の件に入ります。 あらためて確認しますが、私の文学研究者としての最大のテーマは、「戦争と差別をなくすために、文学は何ができるか?」というものです。 大学院博士課…

大岡昇平に代作を命じた小林秀雄

大岡昇平という作家を尊敬していた時期もあったのですが、買いかぶりだったようです。 大岡昇平 「文学は変質したか」 (『群像』1961年6月号 「常識的文学論」第6回 以下の引用は『大岡昇平集 12』 岩波書店 1983 収録 による) 『新女苑』(「…

井伏鱒二の盗作を絶賛する小林秀雄

今日あたり小林秀雄論を完成させるつもりなので(休日なのです)、論文には使えない資料をいくつか紹介していきます。 「文藝月評 ⅩⅨ」(第五次『小林秀雄全集 第七巻 歴史と文学・無常といふ事』収録。『東京朝日新聞』 1940(昭和15)年1月とありま…

木下尚江 「火の柱」

明治の平和主義小説の記念碑的作品、木下尚江(きのしたなおえ。ちなみに男性)の「火の柱」を紹介します。 青空文庫様↓より。私はこのためにブログを始めたといっても過言ではありません。 http://www.aozora.gr.jp/cards/000525/files/3507_16278.html 日…

日本ペンクラブ:電子文藝館

「日本ペンクラブ:電子文藝館」を紹介します。 http://www.japanpen.or.jp/e-bungeikan/home.html#Mokuzi 入手困難な文献がいろいろ読めます。特に反戦・反核史料と主権在民史料は重宝しています。 いなか住まいで大きな図書館になかなか行けない私にはあり…

二論文の比較―冒頭と結末編

……まず冒頭。 ① 鶴田武志「【column】堀田あけみ「1980アイコ十六歳」の周辺」 ( 『 〈東海〉を読む●近代空間と文学』 日本近代文学会東海支部 2009年6月刊) 一九八〇年代は映画、テレビ、マンガなど活字以外のメディアも爛熟を迎えている時代である。…

田中裕之 「井伏鱒二『お島の存念書』と福地桜痴『高島秋帆』」

博士論文のために集めた資料を整理していると、「面白いんだけど、論文に使うにはちょっと」なネタが出てくるものです。いくつか紹介していきたいと思います。 まず、福地桜痴についての最新の論文、田中裕之氏の「井伏鱒二『お島の存念書』と福地桜痴『高島…

「戦争絶滅受合法案」

有名な一文ですが、平和主義の古典です。 長谷川如是閑 「戦争絶滅受合法案」 『我等』 1929(昭和4)年1月 戦争行為の開始後又は宣戦布告の効力の生じたる後、十時間以内に次の処置をとるべきこと。 即ち左の各項に該当する者を最下級の兵卒として召…

大江健三郎 「私らは犠牲者に見つめられている」 『世界』 2011・5 No.817

前から気になっていたのですが、このたびようやく図書館で借りることができました。 「ル・モンド紙フィリップ・ポンス記者の問いに」という副題があり、ル・モンド紙三月十七日付の記事に加筆したものだそうです。内容は(むしろ無内容はと言うべきか)、以…

「愛知者たちの間では素人と呼ばれたが、素人たちの間では愛知者と呼ばれ」

そう、あの人のことです。 ”核通は ネタが尽きたら クリティアス” アンタル 心の俳句 まずは、おなじみバルバロイ様↓より引用させていただきます。 http://web.kyoto-inet.or.jp/people/tiakio/sophists/krt1.html 『ティマイオス』20A-21Aへの古注 ところで…

カフカ 「町の紋章」 池内紀編訳 『カフカ短編集』 岩波文庫 1987 原典は1920

「バベルの塔の建造は初めはかなり順調だった」(冒頭の一文) かなりどころじゃなかったのですよ。やるからには天まで届く塔を建てたい!そのためには、まず土台部分をしっかりと作っておきたい。でないと、後になって問題が発覚し、一からやりなおしになり…

W・ジェイムズ 「戦争の道徳的等価物」

昨日(8月9日)の記事で、平和優先主義(パシフィシズム。抑止力としての軍事力を認める立場)と絶対平和主義(パシフィズム。抑止力としての軍事力すら放棄する立場)の区別について論じました。平和優先主義から絶対平和主義にいたるための道について、…

松元雅和 「正戦論の時代における平和主義の可能性」(『創文』528号 2010・3)

8月5日、石原慎太郎都知事が、核を持つ周辺諸国に対抗するため、日本も(原爆のシミュレーションも含めて)強力な軍事国家をめざすべきという趣旨の発言をしたそうです(毎日新聞8月6日 出典は下記YAHOOニュース) http://headlines.yahoo.co.jp/hl…

第一次小林秀雄全集(創元社版)の裏事情(?)

いつまでも甘い悲しみにひたっているわけにもいかないので、小林秀雄論のまとめを再開したアンタルキダスです。つめたいシャワーを浴びた後の汚れ仕事という感もありますが、やりかけた仕事は終わらせねば。 資料を整理していたら、ずっと前に入手して自発的…