博士論文のために集めた資料を整理していると、「面白いんだけど、論文に使うにはちょっと」なネタが出てくるものです。いくつか紹介していきたいと思います。
「井伏鱒二の文学の中期の佳作」と評される『お島の存念書』(引用者注 『小説公園』 1950(昭和25)年4月初出)は、天保期に起こった高島秋帆の疑獄事件を題材にしている。この作品執筆に当たって、井伏が用いた資料(略)は、福地桜痴(源一郎)の『高島秋帆』(引用者注 1898(明治31)年10月刊行)である。(略)
ここに記された煙草入れと揚げ生姜のエピソードは、桜痴の『高島秋帆』が独自に伝えているものである。桜痴以前にこれらのエピソードを紹介した文献は存在しない。(略)
・・・小林秀雄は『考えるヒント』の中で井伏鱒二を絶賛していましたが、今日の文学研究では井伏のオリジナリティのなさは明らかになりつつあります。無知な小林秀雄は福地桜痴など読んだこともなかったのでしょうが、実証的な文学研究者の眼はごまかせないということです。
盗作。代作。二重投稿。そうした行為は必ずばれるものだと、文学にたずさわる者は知るべきです。
TT氏だけではなく、もう一人のほうもです。いずれまた。