核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

2018-01-01から1年間の記事一覧

来年の展望―非暴力型抑止力の構築にむけて

非暴力・非武装型平和主義の弱点は、暴力への抑止力を持たないことだと、ここ数年考えています。 抑止力があればいいというものではありません。軍事力による抑止力は、他国にとっては脅威となり、最終的には抑止力どころか戦争の引き金になりかねないという…

大賀哲「「テロとの戦争」と政治的なるものの政治学―シャンタル・ムフの国際政治思想への展開」 その4

ムフは普遍(universe)に対して多遍(pluriverse)を提示し、その方向からブッシュJrの「テロとの戦争」を批判します。 「文明/テロ」というブッシュJrの二分法は、一見シュミットの「友/敵」に似ているように見えて、そうではないとムフは論じます。相…

大賀哲「「テロとの戦争」と政治的なるものの政治学―シャンタル・ムフの国際政治思想への展開」 その3

「政治的なるもの」を忘却しているという理由で、ムフは各方面の政治思想を批判します。 特にロールズへの批判に一節を割いているわけですが、当方がロールズに詳しくないこともあり、この節の検討は後日に廻させていただきます。代わりに数日前に『マルチチ…

大賀哲「「テロとの戦争」と政治的なるものの政治学―シャンタル・ムフの国際政治思想への展開」 その2

まず、ムフ独自の用語である、「政治的なるもの」(the political)について。 ムフは一冊まるごと『政治的なものについて』なんて本も出してますが、一言で表現すると「対立」といったあたりになるかと。星新一ならひらがなで「ごたごた」と表現したかも知…

大賀哲「「テロとの戦争」と政治的なるものの政治学―シャンタル・ムフの国際政治思想への展開」 その1

『政治思想研究』二〇〇七年五月。副題の通り、ムフの国際政治思想についての論です。 辛めの評価も含めて、ムフを学ぶ者にとってはためになる論文です。 「はじめに」では、九・一一(二〇〇一年の航空機による大規模テロ事件。あれから二十年近くも経つん…

斎藤美奈子『日本の同時代小説』岩波新書 二〇一八

中村光夫の『日本の近代小説』『日本の現代小説』にならって、1960年代~2010年代末までの日本文学作品を紹介する新書。21世紀の現代文学にうとい私のような者にとっては待望の書です。 同書に扱われているなかで私が読んだことのある最新の純文学…

来年の見通し

今年中には終わりそうもない、芥川「将軍」論の完成はもちろんですが。 もう少し大きな仕事にとりかかりたいものです。例えば、「大正の平和主義文学 総論」といった。 「戦争に対する〇〇」に何が入るのか。それを見極めた上で、昭和の『戦争に対する戦争』…

カール・シュミット『政治的なものの概念』(一九三二) その6

非武装型の平和主義に対して、シュミットはなおも嘲笑を浴びせます。不快に思われる方はお許しください。 ※ 軍備を持たぬ国民は友のみを持つと信ずるのは愚かであろうし、多分無抵抗性によって敵の心が動かされうると信ずるのは自己欺瞞的な予測であるだろう…

カール・シュミット『政治的なものの概念』(一九三二) その5

アウシュヴィッツの後でシュミットを引用することは野蛮であるか。いや、アウシュヴィッツをくり返させないためにこそ、シュミットを熟読する必要があると思います。たとえば以下のような箇所。 「政治的に実存する国民は、(略)友敵を区別することを放棄で…

カール・シュミット『政治的なものの概念』(一九三二) その4

シュミットは戦争を是認してはいましたが、賛美してはいなかったようです。 ※ 生き残った者の商業と工業を繁栄せしめるため、あるいは、子孫の消費力を増大させるために人殺しをし、自らも死ぬ覚悟をせよと人に真面目に要求するといったことは、恐ろしくもあ…

シュミットにも三分の理

芥川の「将軍」は、将軍という戦争遂行機関を、外部の者たちの眼から見た作品なわけですが。 将軍の内部の論理を説いた理論はないものか、と探して見つかったのがカール・シュミット。 将軍というよりその背後にある国家の交戦権についてではありますが。 ※ …

今年の業績は。

どうやら論文一本と確定しました。 あとは、今年まいた種が芽を出すのを期待するのみです。

アドルノ『プリズメン』(予定)

「アウシュヴィッツの後で詩を書くことは野蛮か」とかいう、有名な一文があるらしいので、読んでみようと思います。アドルノについてはほとんど何も知りませんが。 アウシュヴィッツの後で詩を書くことが野蛮だとは私は思いません。が、ナチスを礼賛していた…

長野隆太郎(晴浜)「敗将」(予告)

日露戦争期の反戦小説らしいのですが、長野晴浜でも長野隆太郎でも敗将でも検索で出てきません。 国会図書館であれこれ検索してみようと思います。 日露戦争時に日本軍があからさまに敗れた局面はないはずなので、ロシア側からの視点でしょうか。 2020年…

文学不滅。

文学は死なず、滅びない。その思いを新たにした一日でした。 ただ、純文学不滅とは断言できません。

ネグリ&ハート『マルチチュード(上)』『マルチチュード(下)』NHKブックス 二〇〇五 その3

最初に読んだ時は「所詮マルクスではないか」と思ったものですが、再読して印象が変わりました。 「所詮毛沢東ではないか」に。ネグリ&ハートは手を取り合って喜ぶかも知れませんが、ほめてません。 ※ 革命闘争の間、そして大躍進や文化大革命の時期にはさ…

また「将軍」論に戻ってきたわけだが

現時点の構想のままでは、作品論としても平和論としてもどうにも弱い、と思うわけです。 で、支柱となる理論をあれこれ探しているわけですが、これが見つからなくて。 芥川版聖書「西方の人」「続西方の人」も読み返してみましたが、「汝の敵を愛せ」関係は…

大幅増量

安富歩『貨幣の複雑性』を引用して、沼倉紙幣が貨幣になる瞬間、および貝島が内藤洋酒店につかつか入った理由あたりを書き足しました。 これでもまだ貝島サイドの分析に片寄ってる感がありますが、メンガー経済学で「小さな王国」を読むという目論見は一応達…

マイルドに。

「将軍」論は年内に完成しそうもないので、「小さな王国」論をマイルドにしたやつを投稿しようと思います。 教育論や教室論には触れずに、経済学的に観た「小さな王国」に絞って。それも共産主義的小組織とか資本主義的欲望といった大きな話ではなく、人類が…

ネグリ&ハート『マルチチュード(上)』『マルチチュード(下)』NHKブックス 二〇〇五 その2

いかにしてマルチチュードは〈帝国〉に抵抗するか。具体例の一つとして、著者たちは「キス・イン」を挙げています。 ※ 今日必要なのは、民主主義のための新しい武器を発明することである。実際、新しい武器を見つけるための創造的な試みは数多くなされている…

ネグリ&ハート『マルチチュード(上)』『マルチチュード(下)』NHKブックス 二〇〇五 その1

幾島幸子訳。水嶋一憲・市田良彦監修。副題「〈帝国〉時代の戦争と民主主義」。 RMA(軍事革命)とか勉強になる箇所もありましたが、結論には同意できませんでした。 ※ 近代を通じて、そして今日もなお抵抗運動は、戦争とそれがもたらす暴力に立ち向かう…

ネグリ&ハートなど読んでみる

ムフに批判されている側の言い分も聞こうと思い、『マルチチュード』上下巻なんてものを借りてきました。 日本語版で二〇〇五年刊。今まで読んでなかったのかという批判は甘んじて受けます。ムフより知名度ははるかに上なのに。 で、一回通読してみた感想で…

敵にどう対処するか?

橋本環奈さんが「千年に一人の逸材」なら、シャンタル・ムフは「二千年に一人の逸材」ではないかと、私は真剣に考えています。 人間が生きていく上で「敵」と出くわすことになるのは、数千年前も現在も一緒でして。恋敵や親の敵といった私敵から、敵国人のよ…

ムフもなあ……

私はここ数か月、ご承知のようにシャンタル・ムフという政治思想家に入れ込んでいるのですが。 蜜月時代を過ぎると、粗が見えてくるものです(だんなのラクラウ氏に怒られそうだ)。大戦略としてはムフの闘技的民主主義に賛成なのは変わらないのですが、ムフ…

シヴィライゼーション2

以前にも紹介しました、世界史シミュレーションゲーム「シヴィライゼ-ション」の続編です。 紀元前4000年の開拓者からスタートして、都市を建て原野を灌漑し、道路を伸ばしてまた都市を建て、「騎乗」「車輪」「筆記」などの新技術を開発していくゲーム…

大きな絵は描けそうもないけれど

谷崎潤一郎の「小さな王国」論を書いた時は、「大きな絵が描けそうです」なんて大言を叩いたものの、マルクス経済学対近代経済学という、おそらくは私の手には負えない大問題になってしまい、当分封印するはめになってしまいました。 芥川龍之介の「将軍」論…

将軍という存在

将軍という装置。構造。システム。呼び方はまだ決定していませんが、わが「将軍」論は、文字通り将軍とは何かを問う論になりそうです(乃木将軍やN将軍が何者か、ではなく)。 将軍とは「兵士を率いて国民のために戦う存在」、といったあたりが一般的な認識…

友敵峻別への嫌悪

ようやく芥川の「将軍」にとりかかる気になったので、ここ数日のシュミット論とどうつながるか、まとめてみます。 「将軍」の四つの挿話に共通しているのは、友敵峻別への嫌悪ではないかと。決死隊員のぼやきも間諜処刑へのためらいも強盗劇への失笑も・・……

『戦争に対する戦争』のことなど

同書を「日本の古本屋」で検索したところ、原典はさすがに高価ですが、復刻版なら700円程度で買えると判明しました。『日本平和論大系』の8巻にもまるごと収録されていましたが、そちらは古書にはなし。まあ、どのみち芥川の「将軍」論を終えてからにな…

『戦争に対する戦争:アンチ・ミリタリズム小説集』(予定)

次に大きな図書館に行くときに、まとめ読みしようかと思います。あるいは古書で購入するかも知れません。 シュミットの批判をどれだけ超えられているかを見極めるために。 なお、CiNii図書で収録作品一覧が入手できました。 ※ 馬車屋と軍人 / 江口渙著 …