核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

カール・シュミット『政治的なものの概念』(一九三二) その4

 シュミットは戦争を是認してはいましたが、賛美してはいなかったようです。

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 生き残った者の商業と工業を繁栄せしめるため、あるいは、子孫の消費力を増大させるために人殺しをし、自らも死ぬ覚悟をせよと人に真面目に要求するといったことは、恐ろしくもあり乱暴至極な話でもある。戦争を殺人として呪っておきながら、人びとに戦争を遂行し、戦争で人殺しをし、かつ殺されるのを要求するのは明白な欺瞞である。
  『カール・シュミット著作集Ⅰ』慈学社出版 二〇〇七 二七三ページ
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 ここだけ切り取って読むと、まるでシュミットが戦争を非難しているように見えます。が、前後の文脈からすると、シュミットが「乱暴至極」「欺瞞」と言っているのは戦争に対してではなく、「戦争を殺人として呪」う側のようです。