核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

カール・シュミット『政治的なものの概念』(一九三二) その6

 非武装型の平和主義に対して、シュミットはなおも嘲笑を浴びせます。不快に思われる方はお許しください。
 
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 軍備を持たぬ国民は友のみを持つと信ずるのは愚かであろうし、多分無抵抗性によって敵の心が動かされうると信ずるのは自己欺瞞的な予測であるだろう。(略)一国民が政治的なものの領域に踏止まる力もしくは意思をもはや持たぬことによって、政治的なものは地上から消滅しはしない。消滅するのは弱い国民である。
 『カール・シュミット著作集Ⅰ』慈学社出版 二〇〇七 二七七ページ
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 最後の一行がいかにもナチス、って感じですね。
 非武装型平和主義者にとっては不快な文章ですが、シュミットのいう「政治的なもの」を甘く見てはいけないと思うのです。つまり、「友」とは共通の「敵」を持つことによって「友」たり得るというメカニズム。それが実在するのは確かです。その悪しき構造をそのまま認めるか、なんらかの形で拒絶するかという点で、シュミットと、私(およびムフ)は対立するわけです。
 シュミットが何を善と考えようと、敵の殲滅に徹したドイツ帝国は亡び、「軍備を持たぬ国民」をめざしたインドは独立を達成しました(ガンジー暗殺後はごたついていますが)。歴史的事実が実証したシュミットの誤謬を、理論のレベルで乗り越えること。それが現代にシュミットを読む意義と考えます。