核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

2012-08-01から1ヶ月間の記事一覧

大江健三郎 「最初の詩」 (『厳粛な綱渡り』 1965)

どんだけ原発好きなんでしょうか、大江健三郎という人は。 ※ 一九六〇年夏、東海村で構築中の原子炉の巨大なドオムの壁を螺旋階段をつたってよじのぼっていたとき、ぼくは、不意に幻覚にとらえられた。壁の高みで空気もれをおこす小さなピン・ホールをさが…

大江健三郎 『厳粛な綱渡り』 予告

国会図書館にも初版本がないので、講談社文芸文庫版についていた初出一覧を元に雑誌を調べることにします。 「未詳」がむやみと目立つ一覧ではありますが。 大江の生き様が「綱渡り」なのは認めます。問題は厳粛かどうかです。

小林秀雄 「アシルと亀の子」 予告

「予告。」と書いただけで一日経過してしまいました。お詫びします。 実は近々、川端康成の『浅草紅団』論を書きたくなりまして、1929~1930(昭和4~5)の時代背景を調べようと思ったわけです。 小林秀雄の名を高めた初期の文芸時評「アシルと亀…

明治新聞雑誌文庫

最近、国会図書館で「デジタル化中のため閲覧不可」な文献がむやみと増えまして。釣り場を変えてみようかと思います。 http://www.j.u-tokyo.ac.jp/lib/meiji/index.html 東京大学大学院法学部。とはいえ気おくれしてはいられません。万一博士号げとしたとこ…

潜水艦グルニオン続報

1942(昭和17)年7月、日本の輸送船によって撃沈されたアメリカの潜水艦、グルニオン号。 「グラニオン」の名でウィキペディアに項目がありました。日本語の外部リンクを見たところ、2006年に遺族による調査が行われたそうです。 とりあえず、小…

トルストイの東郷平八郎罵倒

日露戦争直後の1906(明治39)年、小説家の徳富健次郎(徳冨蘆花)がトルストイを訪問した時の話です。 ※ トルストイは戦後に日本人の精神状態を徳富にたずねた。徳富が、戦争は悲しむべきものだが、戦争が人を真面目にさせたのも確かである。東郷平八…

平出英夫 「海戦の精神」(『朝日新聞』1941(昭和16)年5月29日夕刊一面

当ブログの2012年6月10日記事は、杉本健 『海軍の昭和史 提督と新聞記者』(文藝春秋 1982)の以下の部分を引用しました。 ※ この年(1941(昭和16)年)の五月二十八日、二十九日の縮刷版に目を皿のようにして探したが、平出の放送した「…

陸 艶 「小林秀雄「蘇州」をめぐって」

『佛教大学大学院紀要. 文学研究科篇』40、2012-03-01。以下のサイトで全文が読めます。 http://archives.bukkyo-u.ac.jp/infolib/user_contents/repository_txt_pdfs/kiyou40b/D040BR203.pdf 私の初出漁りもまだまだ甘かった、そう感じさせてくれる論文です…

山口守圀 『文学に見る反戦と抵抗』 予告

私が絶対に読んでおかなければならない本だったのですが、うかつにも昨日まで知りませんでした。 黒島伝治以降のプロレタリア作家が題材であり、傾向も明治の平和主義とはちがうのですが、だからこそ熟読せねば。

湯川秀樹編 『科学と人間のゆくえ 続半日閑談集』(講談社 1973(昭和48)年第一刷)

湯川秀樹の、『半日閑談集』に続く第二対談集。小林秀雄との対談「人間の進歩について」(1948)が収録されています。 『新潮』の初出と読み比べると、一箇所の異同と文字表記のぶれを除いて、初出文と全く同じ文章でした。 同じ対談なら当り前じゃない…

野中哲照 「虚構とは何か―認知科学からの照射―」

早稲田大学国文学会『国文学研究』第百四十二集(平成16年3月)収録論文。こういうのを読みたかった、と感じさせてくれる論文です。 虚構はいかにして形成されるかという問題を、以下の3点をあげて論じています。 (1) 虚構とは視点の重層化である (…

伊藤整氏の精確な意見。

伊藤整『日本文壇史3』(講談社文芸文庫 1995)を読んでいて、これはという論に出会いました。1892(明治25)年の、山田美妙が文壇から総攻撃された件について。 ※ 諸方から攻撃されて以来、美妙の悪口さえ書けば批評文の形が整う、という風潮が…

投稿論文、どうにか間に合いました。

9月までは急ぎの用事もなくなったので、たまった宿題を片付けていこうかと思います。 早いうちに。投稿はともかく博士論文がボツになったら、落ち込むどころの騒ぎじゃなさそうなので。

「村井弦斎『小説家』論―小説の面白さとは何か」 リニューアル中

既成の物語論や読者論をあてはめるのではなく、この小説そのものから帰納的に面白さの理論らしきものを引きずりだす、といった仕事になりそうです。 私は別に理論嫌いではありませんが、理論的アプローチが作品の魅力を殺すことになってはならないと、つねづ…

森田思軒 「小説の自叙体記述体」

村井弦斎の「小説家」(1891(明治24)年)を読んでいたら、「小説は自序体(じじよてい)で自分が主人公になつて」という耳慣れない言葉が出てきました。4年前(『国民之友』1887(明治20)年9月15日)に発表された、この森田思軒の「小説…

イパネマの娘

不朽のボサノバ。作曲されたのは50年も前なのですが、モデルとなった女性は現在67歳でご健在だとのニュースを、先程テレビで見ました。

原抱一庵 『闇中政治家』

村井弦斎・遅塚麗水・村上浪六とともに、報知の四天王と呼ばれた新聞小説家、原抱一庵の代表作、『闇中政治家』を紹介します。 メディアも時期も私の守備範囲内であり、暴力否定がテーマといえなくもないのですが、『日本近代文学』2007(平成19)年1…

原抱一庵 「吾の昔」 その3 報知社革命編

『文藝界』1903(明治36)年7~12月。『明治文学全集26 根岸派文学集』筑摩書房 1981(昭和56)より引用。村井弦斎・遅塚麗水・村上浪六とともに報知の四天王と呼ばれた新聞小説家の回顧録です。 ※ 『報知叢話』は箇程評判であつても報知新…

原抱一庵 「吾の昔」 その2 最後の四天王編

『文藝界』1903(明治36)年7~12月。『明治文学全集26 根岸派文学集』筑摩書房 1981(昭和56)より引用。村井弦斎・遅塚麗水・村上浪六とともに報知の四天王と呼ばれた新聞小説家の回顧録です。 脱獄サスペンス小説『闇中政治家』がヒット…

『日本文学』11月号特集 受容と読者の近代

11月号特集 受容と読者の近代 あらゆる表現は先行する多様な表現を受容するなかで生まれてくる。近代文学の表現者たちは、過去の、あるいは同時代の諸表現をいかに受容し、変容させていったのか。海外への/からの受容もそこにはかかわってこよう。こうした…

博士論文審査、無事終了しました!

言うべきことはほぼすべて言いました。できることはもうないので、後は成否を待つのみです。 たとえるなら、『ギャグマンガ日和』13巻の「つっこみ宝船」でしょうか。いや、私もチョイ悪おやじといえばチョイ悪おやじなんですけど。

村井弦斎 「新聞記者」 (『報知叢話』 1891(明治24)年 掲載)

「お嬢様、是れからは貴嬢も妾(わたくし)どもの仲間入りをなすッたのですから包まずお話し致しますが、実は妾も錦城新聞社のもので御座います」 ・・・令嬢記者と秘密探偵メイド。『謎解きはディナーのあとで』みたいな設定ですけど100年以上前の小説で…

湯川秀樹・小林秀雄 対談 「人間の進歩について」

また初出との異同か。そう思われるかもしれませんが、本当にそう言いたいのはこっちの方です。 小林秀雄が戦時中に書いたヒットラー礼賛だの特別攻撃隊賛美だのを、戦後の全集ですべて削除したり逆の意味に書き換えていることは、既に何度か指摘しました。し…

高楠順次郎 「アリストフヮ子スの喜劇」(『帝国文学』 1904(明治37)年1月)

明治と古代ギリシアの夢のコラボ。 当ブログがたびたび取り上げてきた紀元前400年代の反戦喜劇作家アリストパネス(アリストパネース、またはアリストファネス。高楠の文では「アリストフヮ子ス」「アリストフヮネス」等と表記されています)の、日露戦争…

お代嬢の人気に嫉妬。

アートガレー神楽坂にて、黒岩比佐子さんの遺したノートと書簡を閲覧してきました。村井弦斎にあれほど深く感情移入していたにも関わらず、弦斎の日露戦争期の戦争協力ぶりは苦々しく思っていらっしゃったようです。生前に、戦争絶滅についてのお話をうかが…

原抱一庵 「吾の昔」

『文藝界』1903(明治36)年7~12月。『明治文学全集26 根岸派文学集』筑摩書房 1981(昭和56)より引用。村井弦斎・遅塚麗水・村上浪六とともに報知の四天王と呼ばれた新聞小説家の回顧録です。文体は昨日紹介した麗水の「記者生活三十七…

遅塚麗水  「記者生活三十七年の回顧」

『苦楽』1926(大正15)3~5月。『明治文学全集26 根岸派文学集』筑摩書房 1981(昭和56)より引用。 村井弦斎・村上浪六・原抱一庵とともに報知の四天王と呼ばれた新聞小説家の回顧録です。 幸田露伴(成行)と幼少時に爆竹であそんだ竹馬…

大江健三郎 『定義集』 朝日新聞出版 2012

2012年7月30日第一刷発行。「2006年4月18日から2012年3月21日まで、月に一回、朝日新聞朝刊の文化面に連載されました。単行本化にあたって加筆しました」とのことです。 ※ さて私が『小説の方法』でしていた、悪しき日本現代文の引用は、…

テルマエ・サザエ

長谷川町子『サザエさん』四十九巻(姉妹社 発行年記載なし。1966(昭和41)5~8月朝日新聞掲載分とのこと)、75ページより。 「ローマ風呂」と看板のある旅館。 サザエ 「いいじゃなァい!」 マスオ 「ローマぶろがあるんだって?」 おかみ 「ハ…

サザエさん 逆再生

今さらというほど有名な動画ですけど。 http://www.youtube.com/watch?v=JTrr_0StPqc&feature=related アイディアもさることながら、文字起こしの技術がすばらしいです。二時間のインタビューを文字化するのに一年以上かかるやつもいるというのに。