核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

陸 艶 「小林秀雄「蘇州」をめぐって」

佛教大学大学院紀要. 文学研究科篇』40、2012-03-01。以下のサイトで全文が読めます。
私の初出漁りもまだまだ甘かった、そう感じさせてくれる論文です。
小林秀雄の従軍記事、「蘇州」(『文藝春秋』1938(昭和13)6月)を扱っています。
「蘇州」の初出では312~314ページが検閲で削除されているのですが、論者(蘇州出身の方だそうです)は国会図書館京都大学同志社大学大谷大学それぞれの所蔵本を比較し、削除されたページ(慰安所関係の記述)の部分的復元に成功しています。国会図書館だけに頼っていてはいけないという好例です。
戦争記事や小林秀雄に限らず、こういう実証的な研究が増えてほしいものです。「様々なる意匠」や「アシルと亀の子」の発表当時の形態が読めないという現状は、健全とは思えないのです。あの全集補巻上中下は、何のために存在するのでしょうか。