核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

2023-01-01から1ヶ月間の記事一覧

火つけ白秋

月も変わることだし、北原白秋ネタはこのへんで一時打ち切って、伊藤野枝「火つけ彦七」論にもどろうと思います。 とはいえ、問題意識は共通とはいえないまでも連続はしています。公正世界仮説、すなわち、 「自分(たち)はこれだけの損害を受けた。従って…

北原白秋の単調さと公正世界仮説

たとえば、以下のような詩が、北原白秋の代表作とされています。「赤い鳥小鳥」。 ※ 赤い鳥 小鳥なぜなぜ赤い赤い実を食べた 白い鳥 小鳥なぜなぜ白い白い実を食べた 青い鳥 小鳥なぜなぜ青い青い実を食べた ※ ・・・・・・非科学的な上に、どうしようもなく単調な…

かの美(は)しきエレキの夢

もういっこ、「邪宗門秘曲」で気になったのは、 ※ かの美(は)しき越歴機(えれき)の夢は天鵝絨(びろうど)の薫(くゆり)にまじり、 珍(めづ)らなる月の世界の鳥獣(とりけもの)映像(うつ)すと聞けり。 ※ の箇所。美しいものを「美しき」と表記する…

「ら」の字が気に入らない

古語の「われら」は一人称単数の意味で使われていたり(『宇治拾遺物語』)、二人称で使われた例すらあるとのことで、ちょっと自信がなくなっています。 しかし、冒頭で「われは思ふ」とある以上、以下の「邪宗門秘曲」にある「われら」が一人称単数や、まし…

『邪宗門』また一周してみたけど

「邪宗門秘曲」の一節、 「願ふは極秘、かの奇しき紅の夢」 を上回る言葉には出会えませんでした。 もう少し若く、苦悩していた時期なら響いたかも知れない言葉はありましたが。 しかし、こういうのがよい詩だとしたら、今の私が求めているものではないよう…

とはいえど

「邪宗門秘曲」に特化した先行論文もあるので、今日中に国会図書館に注文しようと思います。 木下杢太郎の影響や、語彙の共通点をあげたものが多いようです。近場の図書館でそのへんや、北原・木下ら五人の紀行文「五足の靴」も読み返さなければ。 この「五…

本日の予定

今日は日曜日なのですが。 どうも伊藤野枝論にもどれる気がしないので、本日は一日、かねてから気にかかっている、北原白秋「邪宗門秘曲」について書き倒そうと思います。 CiNiiで検索すると、高橋和巳や芥川龍之介がひっかかったりして、意外と先行研…

願ふは極秘、かの奇しき紅の夢

北原白秋は嫌いでも、 「願ふは極秘、かの奇しき紅の夢」 の一節だけは嫌いじゃないです。 「火つけ彦七」論を書き上げたら、次は自分なりに「詩」についての論文を書いてみたいです。それは結局、 「なぜ詩は戦争に抵抗できなかったのか」 というネガティブ…

中塚亮「台湾人作家としての安能務と, その編訳『封神演義』の特徴について」

久しぶりに論文読んでて爆笑しました。もちろん、中塚氏の論展開がおかしいわけではありません。扱われているコンテンツに対してです。こういう論文を待っていました! 専門家が何といおうと、太公望の左右にいる二人はヨウゼンとナタクであり、ヨウセンとナ…

中塚亮「地方劇における『封神演義』および聞仲像の展開」(『日本中国学会報』二〇一九年一〇月)

私は最近、古代中国風TRPG『央華封神』に手を出したこともあり、『封神演義』関係をあれこれ調べているのですが、なかなか興味深い論文が見つかりました。 殷の太師、聞仲。歴史書には出てこない、『封神演義』固有の架空の人物なのですが、そうとは思え…

児玉花外『社会主義詩集』(一九〇三(明治三六)年)も読んでみた

当時、発売禁止処分を受けた詩集なのですが、デジタルコレクションに復刻版があったので読めました。 一九〇三年は日露戦争の前年なのですが、題名通り社会主義の主張に特化した詩集で、反戦平和の詩は見つかりませんでした。 なんとなく「新体詩」というジ…

山口孤剣「戦争を呪ふ」(週刊『平民新聞』(一九〇四(明治三七)年九月))

戦争を祝う近代詩はいくらでも見つかるのに、戦争を呪う近代詩(ここでは明治~昭和戦前戦中の詩をさす)はわずかです。この「戦争を呪ふ」は、「日本ペンクラブ電子文藝館」様で読めました。(以下、コピペしたためフォントが変わってしまいました。ご容赦…

カーディガンズ「カーニバル」

「カーディガン」という、ふだんあまり使用しない語を見たために追想がふくらみまして、つい検索してみました。スウェーデンのバンド、カーディガンズが1995年に発表した楽曲だそうです。私が知ったのは2000年代になってからですが、思い出深い曲で…

伝言ミスなり伝言ミス

テニスンが詩に詠み、日本の『新体詩抄』にも訳された軽騎兵600名の突撃は、どうやら命令の手違いで生じたようです。ウィキペディア「バラクラヴァの戦い」(クリミア戦争)の項より。 ※ ロシア砲兵が連合軍補給路を攻撃出来る場所へ展開することを防ぐた…

宮崎湖処子「厭戦闘」(『抒情詩』収録 一八九七(明治三〇)年)

アウシュヴィッツの後で詩を書くのは野蛮かも知れない。少なくとも、日本近代詩に関しては。 そもそもの出発点である『新体詩抄』がすでに、 「将の命令だ。どんなに無茶でも兵士は逆らわずに黙って死ね」(意訳) という内容なのです。そんな日本近代詩の代…

『新体詩抄 初編』読んでみた

一八八二(明治一五)年刊行。外山正一、矢田部良吉、井上哲次郎による翻訳および創作詩集。 北原白秋の詩をいくら読んでもさっぱり感動できないので、もしかしたら私の感性は古すぎるのではないかと思い、徹底的にさかのぼってみることにしました。直リンク…

筒井康隆「日本以外全部沈没」

小松左京『日本沈没』のパロディ。本は今手元にないのですが。 題名通り日本以外全部沈没しちゃって、世界中の有名人が日本に押し寄せる話。 「ヒューズがとんでる」というので見たら、当時の大富豪ハワード・ヒューズが飛行機でとんできたというギャグは覚…

ドミノと指

アドルノという人はヨーロッパ文化そのものを、アウシュヴィッツのユダヤ人虐殺を生み出した遠因と考えていたようです。私にその論を正面から反駁する力はありませんが、違う見方を提示したいとは考えています。文化という巨大で扱いづらい相手ではなく、個…

アウシュヴィッツの後に北原白秋賛歌を書くのは・・・・・・

「アウシュヴィッツの後に詩を書くのは野蛮だ」 という、哲学者アドルノの言葉があります。 私はまだろくにアドルノを読んでおらず、上記の言葉にもうなずきかねるところがあります。が、確実にいえるのは、アウシュヴィッツの後に、北原白秋の詩をほめるの…

「相討ち」「道連れ」「犠牲」にロマンを感じる心性と、その弊害

「こんなに多くの犠牲を払ったのだから、勝利が得られるはずだ」 というのは、論理的ではなくても、まだ心情的には納得できます。しかし、 「勝利が得られないのは犠牲が足りないからだ。もっと味方の犠牲を増やそう」 となると、非論理的どころか明白な誤謬…

北原白秋の差し違え嗜好

もしかしたら現代心理学に適切な用語があるのかもしれませんが、私の心理学は後期フロイトで止まっているので、とりあえず「差し違え嗜好」と命名することにします。 「思考」の誤字ではありません。断じて。 ゲームでも各種ギャンブルでもいいのですが、多…

北原白秋の非論理国語、「さしちがへ戦法」

以前にも引用した詩ですが(こういうのを詩というのであれば)、「航空母艦」。 ※ 見ろさしちがへ戦法だ。 撃沈、撃沈、また撃沈、 空母は見る見る沈んでく。 一二三四五六七。 (『白秋全集28 童謡集4』四一三頁) ※ ミッドウェイ海戦を詠った詩なのです…

論理国語の反対語は

「論理」と「文学」は反対語ではないのだから、「論理国語」と「文学国語」を分離するのはおかしい、というご意見もあるかもしれません。確かに、論理的であり、なおかつ面白い文学作品というのは存在します。 論理の反対は非論理。そこで提案ですが、「論理…

正解到達主義ではなく、最適解到達主義を

前々回では、C(コンピューター)RPGはどうしても正解到達主義、つまりデザイナーの意図を読んでそれに従順でなければ先に進めないゲームになってしまうという話をしました。 一方、T(テーブルトーク)RPGは正解ではなく最適解を、マスターとプレイ…

TRPGは教育に良い、という論文もありました。

どうも前回の書き方は挑発的に過ぎたようです。 いつものようにCiNiiでそれらしい論文を検索したところ、 大羽 達己・大井 雄平「テーブルトーク・ロールプレイングゲーム(TRPG)の教育利用──これまでと今後の課題──」(『教育研究実践報告誌』2022.9 第 6 …

TRPGと愚行権、あるいは冒険する自由

昨日の記事はTRPG(テーブルトークロールプレイングゲーム)ネタばっかだったので、ゲームに関心のない方、「核兵器および通常兵器の廃絶」というブログ名で検索なさって来た方は、「いったい平和主義と何の関係があるんだ?」と思われたかも知れません。関…

T&T・M!M!両用ツール「モンスターズポケット」

本作は、「著 ケン・セントアンドレ 翻訳:安田均/グループSNE」が権利を有する『トンネルズ&トロールズ完全版』の二次創作作品です。 (C)Group SNE 「トンネルズ&トロールズ完全版」 倒した人型モンスターから入手できる、宝というほどでもない小物を決定…

T&T・M!M!両用ツール「どこにもドア」

本作は、「著 ケン・セントアンドレ 翻訳:安田均/グループSNE」が権利を有する『トンネルズ&トロールズ完全版』の二次創作作品です。 (C)Group SNE 「トンネルズ&トロールズ完全版」 とことんトンネル汎用迷路作成ツール「とことんトンネル」 - 核兵器お…

T&T・M!M!両用ツール「トラップばっか物語」

本作は、「著 ケン・セントアンドレ 翻訳:安田均/グループSNE」が権利を有する『トンネルズ&トロールズ完全版』の二次創作作品です。 (C)Group SNE 「トンネルズ&トロールズ完全版」 TRPG「トンネルズ&トロールズ」または「モンスター!モンスター!…

トラップばっか物語

前回までの文学話とは無関係な、TRPGというゲームの話です。 地下迷宮を主な舞台とするTRPGには、トラップ(ワナ)が不可欠なのですが、そのトラップに特化したシナリオを思いつきまして。 別に珍しい発想ではなく、去る一九八九(平成元)年にはす…