核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

山口孤剣「戦争を呪ふ」(週刊『平民新聞』(一九〇四(明治三七)年九月))

 戦争を祝う近代詩はいくらでも見つかるのに、戦争を呪う近代詩(ここでは明治~昭和戦前戦中の詩をさす)はわずかです。この「戦争を呪ふ」は、「日本ペンクラブ電子文藝館」様で読めました。(以下、コピペしたためフォントが変わってしまいました。ご容赦ください)。

 

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 戦争を呪ふ 

天の星、野べの百合にも平和やすらぎの、色は満てるを、しこいくさよ。

 

血の酒杯さかづき、舌つゞみ打つ醜人しこびとを、滅亡ほろびにさそふ天の火もがな。

 

バイブルを血汐に染めて、十字架を、つゝにかざらん宗教家おしへびとはや。

 

あめも知れ、つちも記すべし、此民このたみは、人をほふりて人の道と云ふ。

 

教会みやのうち、はやす悪魔の讃美歌よ、いくさに勝てと捧ぐ祈禱いのりよ。

 

醜国しこくに司人等つかさびとらよ、孤児みなしごと、寡婦はゝが血に泣く、声を聞かずや。

 

たゝかひの毒酒に酔へる人の子に、神の怒の鞭よね。

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 日露戦争ただ中での発表であり、その勇気はほめるべきですが、どうしてもキリスト教色が目につきます。キリスト教指導者も大多数は戦争賛美に走っており、山口はそうした風潮が許せなかったのでしょう。

 戦争指導者どもに天罰よ下れ、という主張は明確ですが、キリスト教徒以外の人に訴えかける力は弱く、巧妙な詩とはいいかねます。

 しかし、戦争を賛美した北原白秋なんかよりははるかにましです。マイナス100よりも0.1のほうが大であるように。

 天文学や植物学から見れば、天の星や野の百合もそんなに平和じゃない、というつっこみはあるかとは思いますが・・・・・・。