核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

トルストイの東郷平八郎罵倒

 日露戦争直後の1906(明治39)年、小説家の徳富健次郎徳冨蘆花)がトルストイを訪問した時の話です。
 
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 トルストイは戦後に日本人の精神状態を徳富にたずねた。徳富が、戦争は悲しむべきものだが、戦争が人を真面目にさせたのも確かである。東郷平八郎(とうごうへいはちろう)のような今度の戦争で難局に当った人々はクリスチャンではないが敬虔(けいけん)で真面目な人間である、と語った。すると、トルストイの白い眉の下で目が火のような光を発した。そしてトルストイは、いや、自分はそう思わない。東郷等が敬虔な人間ならば、その敬虔だということは、狭隘(きょうあい)な、事理を弁(わきま)えない頭を持っているということを証明しているだけだ、と言った。(略)徳富はそのトルストイの言葉に不満であった。しかし後で考えると、大馬鹿者と叱られたのだと気がついた。
 伊藤整 『日本文壇史9 日露戦後の新文学』(講談者文芸文庫 1996 219ページ)
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 36年前の『戦争と平和』では、対ナポレオン戦争を偉業の如く書いたトルストイですが(それへの不満は以前に書きました)、晩年は老子墨子の非戦思想を賞賛し、絶対平和主義に傾いていたようです。
 いずれ晩年のトルストイの平和論を読み返してみるつもりです。平民新聞のコピーは持ってますけど、ただいま手元になくて。