核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

松元雅和 『平和主義とは何か』(中公新書 2013) その2 トルストイとラッセル

 同書冒頭より、平和主義の代表者二人の比較を。
 
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 トルストイは内面的で、戦争と平和の問題を絶えず実存の問題として引き受け、自分の信仰の純粋さに専心する一生を過ごした。他方のラッセルは外交的で、同時代の政治・社会問題についていち早く発言し、世界中を飛び回って啓蒙(けいもう)活動に邁進(まいしん)する一生を過ごした。読者の方々は「平和主義者」なる人物像として、どちらの姿を思い浮かべるだろうか。
 (5ページ)
 
 ラッセルは、反戦平和運動に生涯を費やしたが、トルストイのような無条件平和主義者ではなかった。なぜなら、戦争の原則的禁止の例外として、ナチス・ドイツとの戦いは必要かつ正当であると考えていたからである。
 (14~15ページ)
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 松元氏は性急に答えを出すことなく、平和主義のとり得る様々な形態を論じているわけですが、長くなるので今回はここで切ります。
 当ブログは以前にトルストイの『戦争と平和』を批判しましたし、ラッセルのキリスト教批判を好意的に取り上げたこともありますが、必ずしもトルストイ型はダメだと決め付けているわけではありません。晩年(特に日露戦争期)のトルストイの非戦論については、読み返した上で最評価したいと思っています。「暴力によらずして暴力を止める」道を探す手がかりとして。