明治と古代ギリシアの夢のコラボ。
当ブログがたびたび取り上げてきた紀元前400年代の反戦喜劇作家アリストパネス(アリストパネース、またはアリストファネス。高楠の文では「アリストフヮ子ス」「アリストフヮネス」等と表記されています)の、日露戦争直前における紹介です。
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アリストフヮネスは古の天能なり、(略)彼れは劇場に於ける平和の天使なり。都人に対する非違の弾正なり。彼れはその美文能を以て政治家の腐敗を救はんとせり、国幣を空しくし無数の人命を賭したる、ペロポンネシア戦役を中止せしめんとせり。
『帝国文学』 1904(明治37)年1月 23ページ 日本図書センター復刻版より引用
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さらに現存する「アカルニヤ人」「平和」「リシストラータ」等のあらすじとテーマ(「戦争の害悪」「平和の福音」「女子の手に之を解決せんとするの主張」)を紹介し、さらに明治二十五年に牛津大学(オックスフォード?)演劇学会に於いてギリシア語で公演されたという「蛙」を詳細に引用しています。
高楠はさらに「和訳の希望」を語り、「明治三十七年の文壇劇壇」に、「アリストフヮネスの再現」を望んでいます。
ものすごく低く見積もっても、日露戦争期の日本に「戦争を阻止するための文学」という概念が存在したことを証明してくれるこの一文。学位請求論文に引用できなかったことが惜しまれます。