核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

平和主義の二源泉

 『平和』のヒュポテシス(古伝梗概)に、次のような記述があります。
 
   ※
 このように今度もまたこの劇によって、戦争がどれだけ多くの禍いを作り出し、平和がどれだけ多くの幸いを作り出すのかを示し、人々が平和を望むようにと促す。また、平和について忠告したのは彼一人ではなく、他の多くの詩人たちもいる。詩人たちは相談役と全く異ならず、劇によって人々にあらゆる必要な事々を教えていたので、人々は「教師たち」(デイダスカロス)と呼んでいた。
 『ギリシア喜劇全集2』(岩波書店 二〇〇八 二〇二ページ)
   ※

 ……私が注目したのは二行目で、アリストパネス以外の「多くの詩人」も「平和について忠告した」という事実です。
 アリストパネスの喜劇十一篇以外のこの時代の喜劇は残されていないわけですが、ほかにも彼のように、詩劇で平和を訴える人物はいたようなのです。
 これまで平和主義の起源といえばキリスト教が第一に思われてきたわけですが(私も博士論文の審査時に指摘されました)、もう一つの源泉としての古代ギリシアも、もっと注目されていいと思うのです。
 明治時代で言えば、聖書の研究に沈潜し、受動的に非協力を貫く内村鑑三型と、市民のみなさまに文学で非戦論を訴え、能動的に世論を変えていこうとする木下尚江型(あるいは大正期村井弦斎・同武者小路実篤・同賀川豊彦型)。
 これからは後者のタイプも、もっと研究されるべきだと思うのです。