核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

村井弦斎 「新聞記者」 (『報知叢話』 1891(明治24)年 掲載)

 「お嬢様、是れからは貴嬢も妾(わたくし)どもの仲間入りをなすッたのですから包まずお話し致しますが、実は妾も錦城新聞社のもので御座います」
 
 ・・・令嬢記者と秘密探偵メイド。『謎解きはディナーのあとで』みたいな設定ですけど100年以上前の小説です。
 『郵便報知新聞』の別冊小説集『報知叢話』の連載。原抱一庵は弦斎が非協力的だったみたいに書いてましたが、こんな仕事もしていたのです。
 電話機が少なくとも3650台は普及した近未来の明治(実際の明治23年末の電話台数は269台です。遅塚麗水の「電話機」を意識してるな)。日本初の女性新聞記者をめざす花園伯の令嬢秀子。しかし、彼女の秘密は既に新聞社に知られていたのでした・・・で冒頭に引用した場面になるわけです。秀子嬢と腰元探偵お糸の二人は意気投合し、社会悪を暴くべく立ち上がります・・・。
 とてつもなく面白くなりそうな設定なのですが未完に終わり、単行本化もされていません。同誌に連載されてた村上浪六の『三日月』は大評判だったのですけど。反戦要素はないので(新聞社が西郷復活のデマに迷わされる場面はあります)論文にもできず、いろんな意味で惜しいと思いつつ、ここに紹介しておきます。