2012-08-20 伊藤整氏の精確な意見。 虚構論 #ノンフィクション、エッセイ 伊藤整『日本文壇史3』(講談社文芸文庫 1995)を読んでいて、これはという論に出会いました。1892(明治25)年の、山田美妙が文壇から総攻撃された件について。 ※ 諸方から攻撃されて以来、美妙の悪口さえ書けば批評文の形が整う、という風潮が出て来た。文壇と言う複雑な力の攻め合っている場では、悪役にはめ込まれた人間は、常に攻撃され、ほめられる役にはめ込まれた人間は、常に賞讃されるという惰性が働く。(82ページ) ※ ・・・少し後の時代の村井弦斎がまさにその「悪役」でして。森鷗外あたりをほめたたえ、弦斎を「婦女子向け」呼ばわりするだけの、なんの内容もない批評に、私は何度げんなりしたことでしょうか。 文芸批評ではなく文学研究を志す身としては、伊藤整が指摘したような「惰性」とは無縁でありたいものです。 ただ、研究対象としての「惰性」には興味があります。差別や戦争を生むメカニズムとも通じていそうです。