「「牛店雑談安愚楽鍋」の書き方は次のようなものであった。(引用省略)このような洒落と悪ふざけの混った戯文口調は巧妙であったが、小説の考え方は江戸戯作から一歩も出ていなかった」(伊藤整『日本文壇史1 開化期の人々』講談社文芸文庫 1994 より)。
魯文は「福沢諭吉の本をわかりやすく焼きなおしただけ」と言われることも多いのですが、「当世牛馬問答」に関する限り、魯文は諭吉が問題にもしていなかった、動物の魂についてまじめに考えているのです。
前例がまったくないわけではありません。『今昔物語』にも、自発的に食べられたウサギが成仏する話や、いけにえになった7匹のウシがミノタウロスと化して逆襲する話はあります。
では魯文の動物霊魂説は、彼が新時代に適応しきれなかった、古さのあらわれにすぎないのか。
もう10月20日締め切りの特集のことなどは忘れて、じっくりと取り組むことにします。