核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

村井弦斎『日の出島』「朝日の巻」 その5 「大凹み」

 すっかり出世した洋服姿の雲岳女史と、今や女中のお細となった細烟女史。仮名垣魯文安愚楽鍋』の「当世牛馬問答」(http://blogs.yahoo.co.jp/fktouc18411906/9941265.html)みたいな図ですが、そんなほのぼのした関係ではありませんでした。
 
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 「雲岳女史、和女は大層立派におなりだネー、斯んな素晴らしい洋服を着て、此節は馬車へ乗つて歩くさうだネ、(略)昔の事を忘れはしまい、湯島の下宿屋に居た時分私の財布を持つて鮨(すし)や天麩羅(てんぷら)の立食に行つた仲じやないか、(略)生意気な漢語を覚えたのも誰のお蔭だ、皆んな私が教へて遣つたのじやないか」
 (近代デジタルライブラリー『日の出島 朝日の巻 上下巻』 44/168)
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 いくらかは嘘でない要素も混じっていたらしく、雲岳女史もたじたじとなります。芸人コンビの売れなかった方が暴露本を出したようなものでしょうか。ただ、この期に及んでも両女史の本名は判明しませんでした。おそらくは連載終了まで。