核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

大賀哲「「テロとの戦争」と政治的なるものの政治学―シャンタル・ムフの国際政治思想への展開」 その1

 『政治思想研究』二〇〇七年五月。副題の通り、ムフの国際政治思想についての論です。
 辛めの評価も含めて、ムフを学ぶ者にとってはためになる論文です。
 「はじめに」では、九・一一(二〇〇一年の航空機による大規模テロ事件。あれから二十年近くも経つんですね)以降のアメリカ(特にブッシュJr大統領)の「テロとの戦争」言説への、ムフの批判的態度が語られます。後の節でも繰り返されますが、ムフのアメリカ批判は一種独特でして。例のナチス理論家シュミットなんかを援用しているために、反論も多いようです、
 そして、従来の現代政治理論への、ムフの容赦ない批判ぶり。これらをムフ思想のキーワードである「政治的なるもの」を通して読み解き、なおかつ批判すべき点は批判するという論です。
 けっこう長いので、何回かに分けて読んでいこうと思います。場合によっては年をまたぐかも知れません。