核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

大賀哲「「テロとの戦争」と政治的なるものの政治学―シャンタル・ムフの国際政治思想への展開」 その2

 まず、ムフ独自の用語である、「政治的なるもの」(the political)について。
 ムフは一冊まるごと『政治的なものについて』なんて本も出してますが、一言で表現すると「対立」といったあたりになるかと。星新一ならひらがなで「ごたごた」と表現したかも知れません。そういう複数の人や集団が抗争し合う場、と私は読み取りました。
 で、政治的なるものを見失うとどういうことになるか。対立のない世界なら平和でけっこうじゃないかと思うかも知れませんが、対立を無視する社会となると、異質な他者を排除する、非民主主義になりかねないわけで、ムフはそうした風潮を「ポスト政治理論」と呼んで批判しています。
 ここまではムフ語辞典みたいなもので、ここから大賀論の要約に入ります。
 シュミットにならって、ムフは自由主義と民主主義を区別します。 民主主義は人民/非人民の境界線を伴い、自由主義は人類の普遍的人権を主張する。両者の間には亀裂があるわけですが、これまでの政治学ではそれが見落とされがちでした。
 で、だから自由民主主義なんてものは不可能だ、というのがシュミットの立場だったわけですが、ムフはここでシュミットに抗して、その亀裂に自由民主主義の可能性を見出そうとしています。
 このへんで「一」の要約終わり。もしかしたら今日中に「二」までいくかもです。