核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

木下尚江 「火の柱」

 明治の平和主義小説の記念碑的作品、木下尚江(きのしたなおえ。ちなみに男性)の「火の柱」を紹介します。
 青空文庫様↓より。私はこのためにブログを始めたといっても過言ではありません。
 
 
 日露戦争の開戦は1904(明治37)年2月ですが、この小説はその直前の1月1日に、戦争勃発を阻止する世論形成のために、『毎日新聞』(現在の毎日新聞とは別会社です)に連載を開始しました。連載なかばにして戦争は起きてしまったわけですが、娯楽作品としてもすぐれていた「火の柱」は戦時下のひそかなベストセラーになり、非戦を訴える組織「平民社」の貴重な財源となりました。幸徳秋水堺利彦(いずれも木下と同じ非戦論者)・大倉喜八郎日清戦争でもうけた財閥当主)・伊藤博文日清戦争時の総理大臣)といった当時の有名人たちが、あからさまな仮名(伊藤のみ本名。なぜだ)で主戦派非戦派入り乱れての冒険活劇を繰り広げます。
 とはいえ2011年の読者のみなさまには、少々読みにくいかもしれません。
 とりあえず名場面をひとつお見せします。上記のサイトを開いた後、「唇、一つに合して」でご検索ください。
 接吻場面(キスシーン)なんて珍しくもない?
 ふっ。甘いな。男女間ではないのですよ。もちろん男男間でもありません。
 なお、この場面、新聞連載時にはでかでかと挿し絵がついています。日露戦争のさなかなのに。
 「火の柱」の語りつくせない魅力については、今後もこのブログで取り上げていくつもりです。