核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

カフカ 「町の紋章」 池内紀編訳 『カフカ短編集』 岩波文庫 1987 原典は1920

  「バベルの塔の建造は初めはかなり順調だった」(冒頭の一文)
 
 かなりどころじゃなかったのですよ。やるからには天まで届く塔を建てたい!そのためには、まず土台部分をしっかりと作っておきたい。でないと、後になって問題が発覚し、一からやりなおしになりかねない。
 どうせ自分が生きてるうちに完成するはずはないんだし、本格的な工事はもっと建築技術が進歩してからでも遅くはない。塔そのものよりも、まず自分らの住居をしっかり作っておこう。とかやってるうちに・・・
 
 「世代が下るうちに、天まで届く塔を建てることの無意味が知れわたってしまった。だが、その間にたがいに親密な関係ができて、いまさら町を出ていくわけにもいかないのだった」
 
 もう、いっそ誰かこの町を破壊してくれ!ってわけで、町の紋章は握り拳のマークなんだそうです。おしまい。
 文庫本3ページなんだけど、いろいろ心当たりのある短編(サークル活動とかネトゲーとか)。
 ユダヤ人文学として扱われることの多いカフカですが、実は隠れ無神論者なんじゃないかと思ったり。