核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

小林秀雄語録―なぜ戦争は起きたのか

 終戦記念日からは一日ずれてしまいましたが。
 戦争の被害を語り継ぐだけでは、戦争を止めることはできない、というのが私の信念です。戦争の加害者、戦争で得をした人を徹底的に調べ上げなければ。
 その一端として、小林秀雄という批評家の戦前・戦中語録を。「林」とあるのは林房雄という、小林が戦時中にやたら持ち上げていた(そして戦後はまったく言及しなくなった)無名作家です。
 
    ※
    林 時に、米国と戦争をして大丈夫かネ。
    小林 大丈夫さ。[i] 
 
           戦場は楽土である。兵士等は仏である。
    (略)   
   反戦思想といふ様なものはもともと戦争にも平和にも関係がない。[ii]
 
   小林 僕自身の気持ちは、非常に単純なのでね。大戦争が丁度いゝ時に始つてく  れたといふ気持なのだ。戦争は思想上のいろいろな無駄なものを一挙に無くして         くれた。[iii]    
  
   小林 自由主義はつまらん。個人主義はつまらん。社会主義なぞ下らない。さういふ事は西洋の辛辣な天才は既に言つてゐたのだよ。[iv]
  
   小林 いつかあなた(引用者注 海軍大佐平出英夫)の放送なすつた中にあつた、特別攻撃隊といふ文句、あゝいふ言葉が、言葉の上からでなく、生活の中から自然と生れて来てゐる、さういふところが僕は非常に面白かつた。[v]   
 
   要は我々はこの提携は戦争と深く結付くべきであるといふことを茲に覚悟しなければならぬと思ふのであります我々は必勝の信念を固めて居ります。勝つことに於て英米が勝算がある筈がない。英米が撃滅された暁に於ても我々の総和は続くといふ覚悟が必要だと思ひます。私の発言は終ります。ⅵ

 

[i] 小林秀雄林房雄石川達三「英雄を語る」『文学界』一九四〇(昭和一五)年一一月「英雄を語る」 五八頁 全集未収録
[ii] 小林秀雄戦争と平和」『文学界』一九四二(昭和一七)年三月 四頁 該当箇所は全集になし
[iii] 小林秀雄他七名「即戦体制下文学者の心」同人座談会 『文学界』 一九四二(昭和一七)年四月 八〇~八一頁 全集未収録
[iv] 前掲「即戦体制下文学者の心」 九四頁
[v] 海軍大佐平出英夫・小林秀雄河上徹太郎「鼎談 海軍精神の探究」(『大洋』 一九四二(昭和一七)年五月 四二頁 全集未収録
[ⅵ]  『文学報国』一九四三(昭和一八)年九月一〇日中の小林秀雄の発言 「文学者の提携について」と題して全集に収録されているが、引用箇所は削除されている
   ※
 
 注にもあるように、戦後刊行された全集からはこれらの発言はすべて削除されています。
 そして小林は戦後文化勲章を受章し、彼を記念する小林秀雄賞なんてものまで作られています。
 こういう戦争責任者を放置しておいて、「あやまちはくりかえしませぬから」なんて言っても説得力がないと思うのですが。