核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

従軍慰安婦を買う小林秀雄

 『出版警察報』    号七八ページより。小林秀雄「蘇州」(『文藝春秋』一九三八年六月)の削除箇所についての言及。従って、今回も小林秀雄全集や単行本には載っていない箇所です。旧字体新字体に改めました。

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文藝春秋 第十六巻第九号 東京市同社発行 六月一日発行 五月十八日削除
「蘇州」ト題スル記事ハ蘇州ニ設ケラレタル慰安所ト称スル軍関係ノ淫売所ヲ露骨ニ紹介サレタルモノナルガ右ハ皇軍ノ威信ヲ毀損シ併セテ風俗壊乱ノ虞アルニ因リ三一二頁三一三頁安寧並風俗削除。
(前略)慰安所には見学禁止憲兵隊と大きく書かれてゐて、見物するわけにはいかないので、やはり実際に慰安を求めに這入らなければならない。杭州では火野伍長から切符を分て貰つて登楼した「一発」と書き、下に下士官一円五十銭、兵一円とある。(中略)胸にはめい〱番号と名前のはいつた慰安所営所証を勲章の様に付けて居る(中略)這入つて行くと二三人が頓狂な声で○○○○○○しよ、と喚いた。(後略)
  (七八ページ)
   ※

 (前略)(中略)(後略)「○○○○○○」はすべて原文通りで、私は一字も略していません。恐らく伏字は検閲を恐れる文藝春秋側が施したけれど、それでも通らなかったというところでしょう。
 嫌悪感を催す方もおられる方もいらっしゃるかも知れませんが(私もです。いったい何が「やはり」でしょうか)、こういう現実がかつて存在したこと、日本軍が復活すればこうした現実も復活するであろうことは、知っていただきたいと思う次第です。
 
 2019・8・7追記 出版警察報の号数に誤りがありました。再調査します。