核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

横手慎二『スターリン 「非道の独裁者」の実像』(中公新書 2014)

 スターリンの凄惨な独裁体制は、前任者レーニンの時代にすでに準備されていた、という説は前からありますが、新たな資料が加わりました。1918年5月、レーニン政権下のロシアは食糧難におちいり、食糧を強制徴収された農民の蜂起が起きていました。

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 こうした状況でのレーニンの隠された一面を示す文書が一九九〇年代末に初めて公表された。それは、彼が八月一一日にペンザ県ソヴィエトの執行委員会議長宛てに発した次のような電報である。
 「同志諸君、クラーク〔農村の富農のこと〕の五郷の蜂起を容赦なく弾圧しなければならない。革命全体の利益がこのことを要求している。(中略)一、一00人以上の名うてのクラーク、金持ち、吸血鬼を縛り首にせよ(必ず民衆に見えるように縛り首にせよ)、二、彼らの名前を公表せよ、三、彼らからすべての穀物を没収せよ、四、昨日の電報に従って人質を指名せよ。周囲数百ヴェルスタ〔当時のロシアの単位で、およそ一・〇七キロ〕の民衆がそれを見て、身震いし、悟り、悲鳴をあげるようにせよ」
 (108~109ページ)
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 資産がどれくらいまでならクラークなのか、という明確な基準はしめされておらず、食糧の供出に応じない者、レーニン政権に反対する者を手あたり次第にクラーク扱いしていたようです。そうした方針に反対する人も、レーニン時代にはまだ末端にはいたにせよ。
 ロシア革命とはそもそものはじめから恐怖政治であって、スターリンは師の行動を忠実に受け継いだだけ、という印象を受けます。犠牲者の数はけたちがいですが。
 こうした実態がもっと早く世界に知られていたらと、思わずにはいられません。