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太平洋の和戦の決定は、日本の国力、軍事力の詳細を知悉する政府当局に一任すべきであつて、我々国民としては、いかなる大戦争が起つても、それに伴う艱苦を克服するに足る質実にして耐久力ある覚悟を決めて置くべきだと思ふ。
(以下、「わが海軍の精鋭」を我々国民は信じ、東條内閣の臨時議会が国民を明るくしたとの趣旨)
『菊池寛全集 第二十四巻』(文芸春秋 平成7年 476ページ)
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↑開戦直前、昭和十六年十二月の菊池寛(『文藝春秋』「話の屑籠」)。
↓終戦後、昭和二十一年一月の菊池寛(『キング』「話の屑籠」)。
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恐らく、東西の歴史を探しても、こんな無謀な、準備のない、しなくつてもいゝ戦争を始め、しかもこんな惨敗を喫した国家はないだろう。(略)
満洲や朝鮮で、今も苦しみつゝある同胞の事を考へても、この戦争を開始した連中の責任を、鼓を鳴らして責めたくなる。
『菊池寛全集 第二十四巻』(文芸春秋 平成7年 531ページ)
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彼の戦中戦後の発言はすべてこの調子です。菊池寛一人に限ったことでもありませんが、歴史上の記録として残しておくべき文章でしょう。