核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

北原白秋「大東亜地図」(『大東亜戦争 少国民詩集』より)

 一味違う戦争便乗詩。そういう印象を受け、図書館で『北原白秋全集 28 童謡集 4』を借りてきました。

 絵文字にルビつき。つまり(文字化けご容赦)、

 

 [●](ひのまる)だ

  Ω(はうだん)だ

  ✈(ひかうき)だ

 

 といった具合なのです(原文はたて書きなので、そのままではありません)。

 長谷川町子サザエさんうちあけ話』への影響が気になります。

 もっとも、記号表現はちょっと凝っていても、詩の意味内容はいつもと変わりありません。壁にでかい世界地図を貼って、戦勝のニュースのたびに、[●](ひのまる)を書き入れ地図を塗りかえる少年という設定で、絵文字なしの最後の二連はこんな調子です。

 

   ※

 すばらしいの、何のつて、君、

 大東亜共栄圏なんだもの、

 

 僕の脳髄はそのまま地図なんだぜ、

 カナダだつて、スエズだつて、パナマだつて

 もうとうに塗りかへてるんだぜ。

  (『北原白秋全集 28 童謡集 4』(岩波書店 一九八七 三一八頁)

   初出は『週刊少国民』一九四二(昭和一七)年八月二三日)

    ※

 

 なんで大本営も想定してないカナダやスエズ運河を入れるかなあ。その前の連にはシドニーマダガスカルだなんて地名も出てきました。

 不謹慎な話ですが、これを読んで「北原白秋、論文になるんじゃね?」と、いつものよからぬ考えが浮かんでしまいました。懸案の何本かを片付けた後にはなりそうですが。