核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

武者小路実篤『大東亜戦争私感』(1942(昭和17)年)

 どれも似たり寄ったりの、読む前から想像した通りの内容(むしろ無内容)なので、引用は最小限に留めます。さらしものにするのが目的ではないので。
 刊行の日付は5月20日。ミッドウェイ海戦の少し前です。
 
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 大東亜戦争が始まつて以来、我等は日本を見なほし、日本の現代を賛美したい気がしきりとしてくる。実にいい時代に生れあはせたと思ふ。聖代と言ふべきである。
 少し前に死んだ人が気の毒になる程で、僕は之で安心して死ねるやうな気さへする。
 しかし今後も大変と思ふが、しかし日本が負けないことを信じることが出来、本当に亜細亜時代が又来るやうに思ふ。
 しかし僕は欧米を侵略したいとは思はない。しかし米英がいつまでも日本を敵に廻して、しつこく日本をやつつけようとしたら、ワシントン、ロンドンまでも進撃することが必要になるかも知れない。軍人の人達がさういふ決心でゐることはたのもしい。
 欧州の方は盟邦独伊に任せればいいのだと思ふ。
 僕は日本がいつのまにかこんなに強くなつてゐたのに驚く、相手が弱いのではなく、日本が強いのである。
 毎日々々新聞を見る度に日本は偉大なる戦果を、陸海軍が競争してゐるかのやうに挙げている。
 (武者小路実篤大東亜戦争私感』(1942(昭和17)年)
   引用は小学館武者小路実篤全集 第十五巻』1990 374ページより)
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 …そして終戦直後に発表した、「マッカーサー元帥に寄す」では。
 
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 最後に私は日本の国民の多くが、敗戦後反つて自由を得られ、生活の安定の希望を得られ、人間らしくとりあつかはれるやうになつたので、敗けてよかつたと思つてゐることを告白します。
  (武者小路実篤マッカーサー元帥に寄す」(『新生』1946(昭和21)年1月1日号)
   引用は小学館武者小路実篤全集 第十五巻』1990 470ページより)
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 …なんて書いてます。
 武者小路実篤という人を悪人だとは思いませんが…懐疑を知らない思想はもろいものだと思うのです。