どれも似たり寄ったりの、読む前から想像した通りの内容(むしろ無内容)なので、引用は最小限に留めます。さらしものにするのが目的ではないので。
刊行の日付は5月20日。ミッドウェイ海戦の少し前です。
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大東亜戦争が始まつて以来、我等は日本を見なほし、日本の現代を賛美したい気がしきりとしてくる。実にいい時代に生れあはせたと思ふ。聖代と言ふべきである。
少し前に死んだ人が気の毒になる程で、僕は之で安心して死ねるやうな気さへする。
しかし今後も大変と思ふが、しかし日本が負けないことを信じることが出来、本当に亜細亜時代が又来るやうに思ふ。
しかし僕は欧米を侵略したいとは思はない。しかし米英がいつまでも日本を敵に廻して、しつこく日本をやつつけようとしたら、ワシントン、ロンドンまでも進撃することが必要になるかも知れない。軍人の人達がさういふ決心でゐることはたのもしい。
欧州の方は盟邦独伊に任せればいいのだと思ふ。
僕は日本がいつのまにかこんなに強くなつてゐたのに驚く、相手が弱いのではなく、日本が強いのである。
毎日々々新聞を見る度に日本は偉大なる戦果を、陸海軍が競争してゐるかのやうに挙げている。
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最後に私は日本の国民の多くが、敗戦後反つて自由を得られ、生活の安定の希望を得られ、人間らしくとりあつかはれるやうになつたので、敗けてよかつたと思つてゐることを告白します。
(武者小路実篤「マッカーサー元帥に寄す」(『新生』1946(昭和21)年1月1日号)
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…なんて書いてます。
武者小路実篤という人を悪人だとは思いませんが…懐疑を知らない思想はもろいものだと思うのです。