核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

第一次世界大戦期の武者小路実篤

 率直すぎ読みやすすぎる文章が災いして、武者小路実篤という人はあまり真剣に読まれていないのが現状です。しかし第一次大戦期に関する限り、大作反戦劇「ある青年の夢」をはじめとする多量の反戦論を書いていることもあり、今回まとめて読むことにしました。
 
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 戦争をなくなすのはどうしたらいゝか。
 死刑を廃止することだ。各国で死刑を廃止することだ。逃げるものは殺す、それはよくない。殺されるのを恐れていや(踊り字)他国人を殺しにゆくそれは不合理だ。
 それから戦争を賛美するものを志願兵にとることだ。そのおぎないだけは強制してとるにしても、志願兵を益々歓迎するがいゝ。そして戦争にゆかない人間には財産や収入に比例して税をとつてもいゝ。貧乏人からは勿論とる必要はない。国民の義務を健全な人間だけがおうのは不公平でもある。
 (略)
 平和な人間にはこんなことは笑ひ話だ。しかし戦場に出た或人々には笑ひ話ぢやない。
 (略)
 戦争のなくならない一番の原因は、戦争の最大犠牲者は死んでしまつて、戦争で得したもの許りがこの世を我がもの顔することだ。
 (「雑感(7)」 『白樺』1917(大正6)年9月1日号
  引用は小学館武者小路実篤全集 第三巻』1988 588ページより)
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 これに限らず、第一次大戦下の武者小路は何度も堂々たる反戦論を展開しています。
 問題は、その彼でさえ、日中・太平洋戦争期には「戦争を賛美するもの」に回ってしまったことでして。もちろん志願兵になどなっていません。彼の青年時代の理想までが嘘だったとは思いませんが、それを貫徹することはできなかったようです。