核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

戦争の分析の必要性

 「旅順の城はほろぶとも ほろびずとても何事ぞ」と歌う「君死にたまふこと勿れ」には、地政学的・戦略的な想像力が欠如しています。ロシア軍の旅順要塞が健在なままバルチック艦隊が来航すれば、日本本土が危機にさらされ、弟どころか与謝野本人の生命すらおびやかされるわけですが、与謝野がそこまで覚悟した上で歌っているとは思えません。

 酷な言い方をしたかも知れませんが、要は、戦争を分析する眼が、反戦文学には必要だと言いたいのです。同時代で言えば木下尚江の『火の柱』は国内情勢を、第一次大戦期の武者小路実篤の『ある青年の夢』は国際情勢を、それぞれ文学者なりに分析した上で反戦論を展開しています。今後の反戦文学は、それらをふまえた上で、さらに乗り超えるように書かれてほしいものです。