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現実の闘争や消耗戦をも肯定し、自らの理論体系に積極的に組み込むところにヘーゲルの歴史哲学の特徴がある。ナポレオンが戦争によってヨーロッパ諸国に現実に損害を与えても、それも『一般的理念』の新たな生成、絶対精神の自己展開に寄与するのである。こうした闘争を歴史の原動力と見る発想が、マルクスの階級闘争史観に継承されるわけである
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というヘーゲル最大の問題点(仲正氏は問題と思っていないようですが)に本書が応えられているとは思いません。ヘーゲルほど戦争を賛美し、今日はナポレオン、明日はプロイセンという具合に戦争の勝者にこびへつらった哲学者はそうはいません。マルクスへの影響はもちろんですが、ナチズムへの影響も問題にされるべきです。
それでも、戦争賛美、勝者への迎合という欠点を帳消しにする何かがヘーゲルにあるのでは。あるいはと思って読んではみたのですが、見つかりませんでした。