核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

大澤聡『批評メディア論』(岩波書店)

 小林秀雄はいかにして「批評の神様」的存在となったのか。そのあたりを知りたくて読んでみたのですが、情報量の多さに圧倒され気味でした。場合によっては買って読む必要がありそうです。
 とりあえず、最も示唆に富むと思われる一節をコピーしてきました。

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 特定の固有名が世間的な関心を集中的に吸いあげる。そして、有名性を増大させていく。即自的な有名性などありえない。有名人という存在が成立するには無名の一般読者の集合的存在が不可欠である。それを「フアン」といいかえてもよい。彼ら彼女らは当該人物への関心を供給し続ける。私たちはある人物が有名であるがゆえにそれを欲する。と同時に、それを欲することによって有名性を増大させてもいる。
 (二五二ページ)
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 ……有名性の雪だるま現象というと安っぽいでしょうか。そのへんの機微にほかならぬ「岩波」が一役買っていることも、大澤氏は大宅壮一を援用しつつ指摘しています。