核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

ジョセフ・S・ナイ・ジュニア『国際紛争―理論と歴史〔原書第4版〕』における安全保障のジレンマの定義

 少し前にも読んだ気がしますが、今回は安全保障のジレンマがらみを中心に読み直してみます。

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 安全保障のディレンマこそ、国際政治の本質―無政府的すなわち上位の政府が存在しないこと―にかかわる事態にほかならない。つまり、無政府状態の下では、自らの安全保障を向上させようとする1国独自の行動は、〔その国家も含めた〕すべての国家の安全保障を低下させる可能性があるのである。1国が他からの脅威を受けないようにと自らの実力を増大させると、他国はこの国の力が向上するのを見て、この国から自らを守ろうとして自らの実力を増大させようとするかもしれない。そうなると、両方とも自らの力と安全保障を向上させようと独自の結果をした結果、両方とも自らの安全感は低下してしまうのである。皮肉な結果である。しかし、どちらも非合理な行動をしたわけではない。
   ジョセフ・S・ナイ・ジュニア著 田中明彦村田晃嗣訳 『国際紛争―理論と歴史〔原書第4版〕』(有斐閣 二〇〇三 二一ページ)
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 古代ギリシャから二一世紀まで、人類の歴史は絶えずこのジレンマにつきまとわれています。