「おおわが友よ、一人も友がいない」
……というアリストテレス(?)の言葉を延々と繰り返すばかりの、何の内容もない本でした。
「それはおまえがバカだからだろ。デリダ様の深遠な思想を理解できないのか」という反論はあるかもしれません。
しかし、私はギリシア語やドイツ語こそ(ついでに英語やフランス語も)読めませんが、本書で言及されているプラトン・アリストテレスからカール・シュミットにいたる諸家については日本語訳で一通り読み、理解しているつもりです。だからこそ、デリダが必然性あってそれらを引用しているのか、はぐらかしと思わせぶりのための衒学にすぎないかはわかるのです。後者であると。
少なくとも、「遅配」だの「亡霊」だのといったデリダ語を、さも深遠めかして引用するある種の日本文学研究者の論に、恐れ入る必要はまったくないと、あらためて了解しました。それは私の考える「研究」ではないし、そこから世界平和に至る思想が生まれるとは到底思えません。
デリダの友にはなれそうもない。そう再確認できただけが収穫でした。