核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

田中義晧『世界の小国 ミニ国家の生き残り戦略』(講談社選書メチエ 2007)

 バチカンモナコアイスランドといったヨーロッパのミニ国家(この本では、人口100万人以下の国をそう定義しています)はわりと有名です。
 しかし、カリブ海地域のアンティグア・バーブーダオセアニアマーシャル諸島共和国、アフリカのカーボベルデ共和国となりますと、そういう名前の国があること自体、あまり知られていないのではないでしょうか。私はオースティンの小説『マンスフィールド・パーク』でアンティグアという地名は知っていましたが(年収3万ポンドの財源なんですね)、独立国になっていたとは知りませんでした。
 バチカンが典型的な例ですが、小国=貧乏とは限らないし、侮るべからざるミニ国家というのも多々あります。
 「ミニ国家のほぼ半分にあたる二一ヵ国は正規の軍隊を持たず、警察隊および沿岸警備隊が国防の任務を担っている(195ページ。バリー・バートマンの著述より)そうです。
 たとえばルクセンブルグ大公国の陸軍は4個中隊、完全志願制の軍人350人だそうですが(ウィキペディアより)、田中氏はルクセンブルグの、小国性を逆手にとる外交姿勢の伝統に注目しています。「「小国性」が近隣諸国に対して無用な脅威感を与えず、信頼のおける公正な仲介役を担うことを可能にしたからだ」(159ページ)。
 もう一つ、ミニ国家の利点は数の力です。少なくとも建前上は一国一票である国際連合のような場では、いくら大国を気取っても一国にすぎない日本も、ミニ国家の団結に敗北することもあるわけです(捕鯨問題など)。
 今さら日本がミニ国家に戻るのは不可能だとしても(明治前期には可能だったかもしれません。人口以外では)、無意味にミニ国家を侮るのは、日本および世界の未来を案ずるもののすることではありません。