核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

田中義晧『世界の小国 ミニ国家の生き残り戦略』(講談社選書メチエ 2007)  その2 近代日本の場合

 同書最終章「日本との関係」に、近代日本における小国主義の系譜が言及されます。
 岩倉使節団が大国のみならずヨーロッパの小国のあり方にも関心を持っていたこと(『特命全権大使米欧回覧実記』によるとのことですが、残念ながら未見)、大正期の三浦銕太郎(みうらてつたろう)や石橋湛山(いしばしたんざん)を例に、植民地放棄・小国主義の系譜が日本にも存在し、それは戦後の「ミドルパワー」論に通じているようです。
 ルクセンブルグの軍事力には無知だった私も、このへんの話なら議論に参加できそうです。明治前期の日本は富国強兵一色だったわけではなく、非軍備もしくは軽軍備による、平和主義と小国家をめざす論調が、民間のみならず政府内にも存在したことを、私は博論その他であれこれと事例をあげてきました。転回点は日清戦争です。
 司馬遼太郎の『坂の上の雲』なんてのは明治のそうした面を一切無視して、日本が侵略戦争のできる国になったことを賛美しているとしか思えない小説です。が、司馬の最高傑作であることは否定しません。