核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

賀川豊彦『空中征服』より 光線列車

 今までマルクス批判の箇所ばかり引用してしまいましたが、やぼな話ばかりではなく、想像力の飛躍に満ちた場面も『空中征服』には多々あります。その一か所、火星への移住場面を。

   ※
 霊の賀川市長はすべての人々に布告した。
「空中村の人々はすべて即刻火星に移住する。乗物は光線列車……アインスタインの相対性原理による、光線列車の軌道は多少湾曲しているけれども、九千三百万マイルを八分間に走ることが出来る。それで火星までは三分とはかからぬと思う。光線列車の窓からは決して首や手を出さぬこと、首や手を出すことがあれば、絶対零度の空間を通過する場合に、冷気のために凍え落ちてしまう恐れがある」
 火星行の光線列車は約六千人の天人を乗せて出発した。
   ※

 宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』は、「1924年ごろ初稿が執筆され、晩年の1931年頃まで推敲がくりかえされて、1933年の賢治の死後、草稿の形で遺された。初出は1934年刊」だそうです(ウィキペディアより)。『空中征服』(1922)の上記場面が影響を与えたかどうか。