ワシントン会議を背景とする、世界的な軍備縮小の空気の紹介。国際世論の要求と国家予算の限界の両面から、軍費制限の必要性を論じています。賀川豊彦と違い、こちらは軍備撤廃にまでは踏み込んでいません。
もう一つの論点は、空中軍をはじめとする新式兵器への危惧。
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此頃亜米利加で独逸から受け取つた戦闘艦に対して、果たして戦闘艦なるものが飛行機から投ずる爆弾に堪へるや否やといふ実験を致しました。従来は戦闘艦は飛行機に出会つては役に立たぬと云ふ本当の試験は無かつたやうでありますが、此試験の結果爆弾が戦闘艦に中れば之を破壊することが出来ると云ふことが明かとなつた。
軍備縮小同志会『軍備縮小講演集 第1輯』(1922) より 尾崎行雄「華盛頓会議と軍備制限」 56/62
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真珠湾を20年先取りしています。さらには無線電信による飛行機・潜航艇の無人遠隔操作の可能性も。先取りしすぎです。
べつに尾崎はこうした兵器の進歩を喜んでいるわけではなく、 その制限の困難を危惧しています。すでに使用された兵器と違い、これから発明される新兵器は条約で制限することができない。だから「軍費」の制限という形で制約すべきだという結論です。