「マルクスを尊ばず」の一例として。
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何かもう少し強い真理の世界に掘り下げねばならぬと、彼は考えた。
すべての社会運動は果して何の上に立っているか? マルクス社会主義者は「唯物的生産の上に」と言うであろう。しかし、その物質的生産は何のためであるか、それは要するに生きるためではないか! そして生きるのは何のために生きるのか?
ああ、すべてが表面の表面である。人間はもう少し深い所に住まねばならぬ。社会運動も労働争議も、この人生の根本義から出発せなければすべてが徒労である。こう考えて彼が大阪の空を眺めた時に大阪の煙も空の空なるものであった。
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「深い所」とは何か。そのあたりが『空中征服』を貫くテーマのようです。