「コレ菊姫、何故あつて此店の品物は一つも売れぬのであらう」
明治初年、士族の商法を題材とした中編です。
題名通りの槍一筋、三千石の旗本とその姫君が骨董屋を開くものの、羽織ばかまで客どもをどなりつけるような接客ぶりでさっぱり売れず、商人の息子を婿養子にするも、大事な家宝を二束三文(といっても当時の適正価格)で売られてしまい…といったドタバタ劇です。
とはいえ、斬新な発明やアイディアで救われるわけでもなく、登場人物の誰一人として幸福にならないという、弦斎には珍しい展開でした。思えば村井家も士族、喜劇として書ききるには辛い思い出でもあったのでしょうか。
この本には歴史小説「渡宋の船」も収録されていました。またいずれ。