核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

食道楽

平成セカイ系と明治ウチュウ系

「本常(ほんとう)にネー、地球の外から誰か見て居たら嘸(さぞ)可笑しなもんで せうネー」 三回も引用してしまいました。村井弦斎『加利保留尼亜』(一八八八(明治二一)年)の一節です。明治ウチュウ系文学と、私はひそかに呼んでいます。 それがどうし…

明治SFはなぜ宇宙を語るのか

「本常(ほんとう)にネー、地球の外から誰か見て居たら嘸(さぞ)可笑しなもんでせうネー」 村井弦斎の第一作の一節です。気に入ったのでまた引用しました。 「宇宙から見たら」という発想は弦斎に限りません。ほぼ同時期には『文明世界 宇宙之舵蔓』という…

村井弦斎『加利保留尼亜』、再読

このたび国会図書館デジタルコレクションで、『明治文庫 短編小説 第一五編』収録の版を(つまり一八八八(明治二一)年の初出ではありません)、再読してみました。 「本常(ほんとう)にネー、地球の外から誰か見て居たら嘸(さぞ)可笑しなもんでせうネー…

手に入らない水の月。実現不可能な平和という理想?

村井弦斎の第一作(確認されている限りでの)、『加利保留尼亜』は、人類どうしでの戦争をやめ、人類をおびやかす天然力と戦うべきだという、崇高な理想を掲げていました。 しかし第三作『匿名投書』(これも確認の限りでの第三作)では、ロシア・清国の日本…

黄金島はなかった

村井弦斎の本当の第一作『黄金島』は、どうやら入手不能のようです。 以下、『郵便報知新聞』一八八八(明治二一)年三月一〇日の記事より。 ※ 募集小説評定広告 昨年本社が賞を懸けて募集せる小説は応募の寄稿無意四十七通に及へり記者仔細に之を評定して左…

『水の月』を手に入れた!

水に映った月が手に入るはずはないのですが。 『北海道毎日新聞』のマイクロリールを回し、スキャンして全文入手できました。 村井弦斎の未発見小説です。これで各地の弦斎研究会に顔を出すとき、ちょうどいい手土産ができました。もちろん、これで論文を書…

村井弦斎デビュー前の幻の小説『黄金島』(一八八七(明治二〇)年)

つい先ほど『加利保留尼亜』を弦斎のデビュー作と書いてしまいましたが、それ以前に幻の小説『黄金島』を、『郵便報知新聞』に投稿していたようです。 論文、松原真「小説隆盛と新聞メディアー明治二〇年前後の新聞小説について」(一橋大学『人文・自然研究…

村井弦斎『加利保留尼亜』、国会図書館デジタルコレクションで読めました。

村井弦斎の、記念すべき小説第一作。『明治文庫』第十五編に再録されたものがPCから読めます(要ログイン)。 実は私は、冒頭の戦争否定論めいた論文だけは鮮烈に覚えているものの、その後の才子佳人の危難部分は適当に読み飛ばしていたのでした。次作『水…

水無月中には『水の月』

もう六月も半分過ぎてしまいましたが。 村井弦斎が『北海道毎日新聞』に連載した『水の月』をはじめとして、そろそろ国会図書館に読みに行きたい資料がたまったので、近日中に決行しようと思います。 私はこれまで北海道という地に特別の興味はなく、行った…

昨夜の夢と今朝の夢

昨夜は、未読の村井弦斎作品を、やたら狭く天井の低い書庫で読む夢を見ました。 そして今朝の(もちろん目が覚めた状態での)私の夢は、「水の月」や遅塚麗水との合作「美少年」など、未読の稀少な弦斎作品、および神奈川近代文学館所蔵の弦斎資料を読破する…

村井弦斎の人生が提起する問題

平塚、豊橋の両市をはじめとして、村井弦斎が脚光を浴びているのは好ましいことですが。どうも毎回「食道楽の人」「食育の提唱者」という切り口ばかりだと、少々不満を感じてもいます。それだけの人ではないのです。そもそも『食道楽』は、シリーズ『百道楽…

村井弦斎の未発見(?)小説「水の月」(『北海道毎日新聞』1889(明治22)年11月1日~12月29日 未見)

数秒前に検索して発見しました。 札幌市中央図書館/新札幌市史デジタルアーカイブ の新聞小説年表の中に、弦斎居士「水の月」の名が。 出世作「匿名投書」などよりも前の作品です。亡き黒岩比佐子さんも、おそらくこの「水の月」まではご存じなかったのでは…

村井弦斎「写真術」(一八九四(明治二七)年)、再読

世界平和のための第2歩が思いつかないので、気分を変えてみました。 この作品自体は戦争とも反戦とも無縁ですが、村井弦斎は第一次世界大戦期に絶対平和主義、軍備廃絶主義に転じた人です。 白黒写真しかない時代に、鏡のように色まで写る写真の発明と、写…

「肖像写真」とは?

平瀬礼太「御真影狂想曲」より。 ※ 戦前の日本では御真影といえば天皇と皇后の肖像写真のことであり (『春秋』2012年12月 24頁) ※ なにげなく読み飛ばしそうですが、誤解をまねく表現です。「肖像写真」とは何なのか。

平瀬礼太「御真影狂想曲」(『春秋』2012年12月)

国会図書館に依頼した、御真影関係論文の一本目が届きました。 私が欲しかったのは御真影製作の背景だったのですが、この論は御真影が流布していく過程を論じたもので、ちょっと求めていたものと違いました、平瀬論に罪があるわけではなく、遠隔複写依頼では…

こういう時間に

おなかがすいて困っています。赤いたぬきの特盛が食べたい。

赤いたぬき

このところ固い話続きだったので、少しやわらかくします。外はさくさく中はふんわりで。 以前にある方のブログから示唆を受けて「赤いたぬき」「緑のきつね」(それぞれの具をのせかえるやつ)を自作したことがあったのですが、赤いたぬきの方が好印象でした…

弦斎くん

弦斎ひげを生やしたカレーパンのゆるキャラ。 高久製パン(株)様の公式キャラだそうです。リンクは貼りませんが、「弦斎くん」で画像検索すれば出てきます。 一弦斎ファンとしては、こうした流れを好ましく思う者です。 が、弦斎の美食家としての面「だけ」…

食育改善。

私はラーメンやスパゲティといった麺類が大好物なのですが、ここ数日は麺をすこし減らしてもやしを入れるようにしました。心なしか体調もいいようです。

夜食道楽。

こういう深夜にブログや論文を書いている時は、今までたいてい何か食べながらだったのですが。 今後はお茶かコーヒーを飲むだけにします。 「深夜のつまみ食いなどは動物性の劣情に過ぎんネ、決められた食事しか食べんのが人の覚悟だ」といったことを弦斎先…

個人史よりも社会的影響の観点から

どうもここ数日、素人精神分析批評というか、通俗的なファミリーロマンスに陥ってしまったことを反省しています。弦斎の原動力が仮に父(清)との葛藤にあったとしても、私の力では証明不可能なのでした。 そもそも私の専門は「文学と平和」、もう少し拡大す…

村井弦斎の恋愛/愛情観

村井弦斎の恋愛観について、相反するように見える二つの意見があります。 ※ 弦斎は恋愛を推奨したが、結婚に至らない性関係は強く否定していた。愛することが人間の自然な情なら、自制することもまた人間性の重要な側面なのである。 長山靖生『奇想科学の冒…

村井弦斎『女道楽』中の源氏物語批判。

たしか『食道楽』にも、源氏物語の講釈は料理の役に立たん、といった批判があった気がしますが、『女道楽』はさらに辛辣です。 琴の「葵の上」から、能に登場する六條の息所の生霊の話になって。 ※ 母「それは嫉妬の幽霊だよ、光る君と云ふ人が男にあるまじ…

反復される父の名。

『女道楽』は、題名自体が巨大な釣り針のような作品でして、女道楽をいましめるのが目的で書かれた啓蒙小説です。いつものように、女道楽の主人公と対照的な、青水清という人物が出てきます。 いつものようになのですが、『酒道楽』でその役割を果たすのが「…

『釣道楽』雑感。

やっぱり『釣道楽』好きだなあ。うちには上巻の復刻版しかないのですが、読み返してみてその感を深くしました。 「恋愛なんてものは動物性の劣情」というのが弦斎の口癖でして、この『釣道楽』にもそういうセリフは出て来るのですが、にもかかわらずちゃんと…

『酒道楽』と『釣道楽』

『酒道楽』再読完了。確かに面白かったけど、これで論文は(少なくとも今は)書けないという結論に達しました。 その理由をだらだら書いてみます。 弦斎のほとんどの作品は、「発明が人を不幸から救う」という主張で貫かれてまして、『酒道楽』も例外ではな…

『酒道楽』中の「活動写真」

村井弦斎の『酒道楽』(一九〇二)は、アルコール依存症からの脱却を描いた禁酒小説ではありますが、裏の物語として顕響器(音を大きくする機械)や蓄音器(音を再生する機械)の発明・改良が主題になっておりまして。 そんな同作品の花見酒の場面。酔態を演…

キセル構造。

平和主義という観点から、小説家としての村井弦斎の作品群を眺め渡した場合。 明確に戦争を否定しているのは、第一作『加利保留尼亜』の冒頭と、最終作『小松島』の末尾に過ぎないという、なんか情けない結果になってしまいます。 もちろん、それ以外の厖大…

久しぶりに村井弦斎について

木下尚江、矢野龍渓、福地桜痴と並んで、村井弦斎は私にとって重要な作家の一人です。 にも関わらず弦斎についての論文を一本も通せずにいるのは、研究者として忸怩たるものがあります。 いつかはと思っているのですが、今現在の関心事(ムフの闘技的民主主…

ひさしぶりに弦斎関係

今年もまた、弦斎まつりの季節がめぐってきました。平塚市のサイトより転載。 ※ 「第19回村井弦斎まつり」の開催日が決まりました 平成30年9月23日(日曜日・秋分の日) 午前10時~午後2時30分(予定) 小雨決行 村井弦斎公園(平塚市八重咲町22-5) ※ 休日…