核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

村井弦斎『女道楽』中の源氏物語批判。

 たしか『食道楽』にも、源氏物語の講釈は料理の役に立たん、といった批判があった気がしますが、『女道楽』はさらに辛辣です。
 琴の「葵の上」から、能に登場する六條の息所の生霊の話になって。

   ※
 母「それは嫉妬の幽霊だよ、光る君と云ふ人が男にあるまじき不品行な事をして彼方の女を欺したり此方の女を欺したりするから其女が生きながら幽霊になつたのです」
 (略)
 小娘「今ではその光る君と云ふ様な人も居ないでせう、女を欺したり悪い事をしたりする様な人は」
  村井弦斎女道楽』(一九〇三) 二ページ
   ※

 はっきり「悪い事」と書いてます。
 受験用古典の源氏物語に苦しめられた思い出しかない私には痛快なのですが、異論も多いかも知れません。一夫一婦時代のモラルを古代に押し付けるのはどうかとか。

 追記 一行目の『食道楽』は『酒道楽』の誤りでした。以下の山住清のセリフの通りです。

 「ところが百川君、僕の女房は昔し風の婦人教育を度に過ぐるまで受けておるが文明流の新教育即ち実用の智識は少しもない、源氏の君は何を召上ったという如き歴史上の事は知っていても米はどうして炊くか麦はどういう成分だか御存知ない」
 『酒道楽』(一九〇三 引用は岩波文庫 二〇〇六 八一ページより)