核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

反復される父の名。

 『女道楽』は、題名自体が巨大な釣り針のような作品でして、女道楽をいましめるのが目的で書かれた啓蒙小説です。いつものように、女道楽の主人公と対照的な、青水清という人物が出てきます。
 いつものようになのですが、『酒道楽』でその役割を果たすのが「山住清」で、『釣道楽』にも「清江嬢」が登場し(彼女は主人公と同じ釣り好きです)、村井弦斎の父の名も「村井清」とくると、ただごとではない印象を受けます。潔癖症を通り越して偏執的です。
 フロイト派やラカン派なら「反復される父の名」がどーのこーのという論文が書けるのでしょうが、そんな無意識的なものでもないと私は思います。儒者だったという父の影響が大だったのは確かでしょうが。