核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

弦斎研究17年。

 弦斎ひとすじ、というわけでもありませんが、17年もつきあっていて掲載論文が一本もないというのは寂しいものです。今度の「写真術」論は載ってほしいものです。

 あれは確か二〇〇四(平成一六)年だったと思います。「感覚表象とメディア」というお題で大学院のゼミ発表をすることになって、味覚を扱った文学をやりたい、などと後輩と話していると。

 

 「菅原さん、くいどうらくなんかどうっすか?」

 

 うかつにも当時の私は『ディスクールの帝国』さえ読んでおらず、『食道楽』の存在も知らなかったのでした。さっそくネットで調べて、こんな面白い人がいたのかと驚き、善は急げで『ディスクールの帝国』や『食道楽の人 村井弦斎』がある図書館に飛んだわけです。

 その後ダン・スペルベルの表象論など読んだりして、ゼミ発表は妙に小難しいものになってしまいましたが、わりあい好評を頂けました。弦斎という素材そのものがよかったのでしょう。

 亡き黒岩比佐子さんに異を唱えるわけではありませんが、私にとっての弦斎は「食道楽の人」であるよりは、むしろ「百道楽の人」です。矢野龍渓ゆずりの幅広い関心領域を持つ弦斎が、ただの食通扱いで終わってしまうのは残念なことです。なんとか弦斎が人生最後にたどりついた「平和道楽」を論文化したいものです。国会図書館に注文した資料が届けば、少しは新たな弦斎像が見えてきそうなのですが……。

 

 2021・12・22追記 『メディア・表象・イデオロギー』ではなく、『ディスクールの帝国』でした。訂正してお詫びします。