つい先ほど『加利保留尼亜』を弦斎のデビュー作と書いてしまいましたが、それ以前に幻の小説『黄金島』を、『郵便報知新聞』に投稿していたようです。
論文、松原真「小説隆盛と新聞メディアー明治二〇年前後の新聞小説について」(一橋大学『人文・自然研究』 13 194-211, 2019-03-29)の注(9)によりますと、村井寛(弦斎の本名)の投稿小説『黄金島』が、四七通の応募作品から一等に選ばれたと、『郵便報知新聞』一八八八(明治二一)年三月一〇日の紙面最後の方に記されているそうです(現物未見)。
2023・6・21追記 『黄金島』は掲載されていませんでしたが、同記事は読むことができました。
『黄金島』自体は掲載されなかったのですが、これが改題されて『加利保留尼亜』になった可能性もあろうと、松原氏は推察なさっています。時期的にもごく近いし、19世紀末のカリフォルニアといえばゴールドラッシュ→黄金という連想はありえます。
いくら気宇壮大な弦斎でも、アメリカ大陸を「島」とは呼ばないだろうけど。
弦斎最後の小説『小松島』(こまつじま)が、第一作「こがねじま」への回帰を示すものだとしたら面白そうです。